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2019年01月09日13:51

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イタリアの悲しきインフラ

 
 イタリア人にとって高速道路(アウトストラーダ)は誇りだった。世界で初めて長距離の高速道路が建設された国はイタリアだった。1924年に開通した、ミラノとバレーゼを結ぶ全長約60キロのアウトストラーダである。(ドイツはベルリンにAVUSと呼ばれる高速道路を1921年に開設しているが、全長は8キロにすぎなかった)
 それだけに今年8月に高速道路の陸橋が崩壊した事故は、イタリア人の誇りを深く傷つけた。私は過去28年間に約20回車でイタリアに旅行しているが、確かにイタリアの高速道路では、ドイツやオーストリアに比べると、路面の状態が悪く走りにくい区間が多い。トリノ方面からトスカナ地方のフィレンツェに抜けるトンネルは狭い上に照明がついておらず、真っ暗。トンネル内のカーブや坂道も多いので、多くのドライバーに嫌がられている。高速道路にタイヤや自動車部品が落ちていることもよくある。
 また南部カラブリア地方の高速道路では、路面の白線がかすれて見えなくなっている個所もあった。多くのドライバーが車線を守らず、好き勝手に走っていた。非常に危険である。
 ドイツの高速道路はイタリアに比べて幅が広くはるかに走りやすいが、乗用車は料金が無料である。イタリアでは高い通行料金を取るにもかかわらず、高速道路の状態が劣悪であることに私も不満を抱いた。交通インフラの老朽化は、イタリア経済の疲弊を象徴している。
 イタリアは「ヨーロッパの病人」と呼ばれる。長年にわたり政界の腐敗と経済停滞が続いているからだ。去年の累積公的債務残高は2兆2631億ユーロ(294兆2030億円・1ユーロ=130円換算)とEUで最大。公的債務残高の国内総生産に対する比率は131.8%とギリシャ(178.6%)に次いでEUで2番目に高い。2017年のイタリアの経済成長率は1.5%で、EU平均(2.4%)よりも大幅に低い。
25歳未満のイタリア人のほぼ3人に1人が、失業している。同国の若者の失業率はギリシャ、スペインに次いでEUで3番目に高い。好景気に沸くドイツの若年失業率は、イタリアの約5分の1だ。ヨーロッパの南北格差は、債務危機とポピュリズムの温床である。国の財政がこの状態では、イタリアの高速道路は当分良くなりそうにない。同国政府はこの巨額の借金をどのようにして返済するのだろうか?
(熊谷 徹 ミュンヘン在住)ホームページ http://www.tkumagai.de




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