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2018年12月16日06:59

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ドイツ機械メーカーの誇り(下)


 ドイツ経済の誇りである中小企業(ミッテルシュタント)は、今大きな曲がり角にさしかかっている。彼らは、製造業のデジタル化(インダストリー4.0)という試練に直面しているのだ。
 物のインターネット(IoT)は製造業とIT技術の融合だ。それだけに、機械製造に特化したミッテルシュタントは新たなノウハウを導入したり、組織の組み換えを行ったりしなくてはならない。IoT導入には追加投資やIT専門家の採用が必要になる。このため、ミッテルシュタントの中にはIoT導入に足踏みする企業が少なくない。
 ドイツの政府系金融機関KfW(ドイツ復興金融公庫)は、今年3月に発表したミッテルシュタントにおけるIoT普及度に関する研究報告書の中で、「ミッテルシュタントではデジタル化がもたらす利点がまだ十分に理解されておらず、IoTの普及度が比較的低い」と指摘している。この報告書によると、2014〜2016年にデジタル化プロジェクトを実行したミッテルシュタントの比率は、26%にすぎなかった。
 シュトラウビングのシュトラマMPSのヴィットル社長は、「我が社は、製品を流れ作業で組み立てるメーカーではなく、顧客の注文を受けてテイラーメイドで製造ラインなどを作るメーカーなので、工作機械と部品をネットで接続するサイバー物理システム(CPS)の導入はまだ行っていません。製品を納入した後も、お客様からのエンジニアがサポートをする必要があるので、完全にデジタル化することが難しいのです」と語る。
 社長は、機械メーカーがネットにつながれた製品から送られてくるビッグ・データを分析することにより、新ビジネスモデルを提供する「スマート・サービス」には、懐疑的だ。彼は言う。「確かに今ドイツの機械製造業界では、メーカーがビッグ・データに基づいて新しいサービスを提供することについて、盛んに議論が行われています。しかし、お客様が機微な情報を保護するためにデータを他社に渡したがらないケースを経験したことがあります。さらに、最近VDMA(ドイツ工業連盟)の会議に出席したのですが、ビッグ・データに基づくサービスで収益を稼げている企業は、ほぼ皆無でした」。
 さらにヴィットル社長は、こう言った。「私は、デジタル化の時代になっても、ドイツの機械メーカーの優位性は崩れないと100%確信しています。インダストリー4.0も、機械製造の技術がなかったら成立しません。物づくりは、絶対に生き残ります」。そこには、この国の地域経済を支えるミッテルシュタントの強い自信と誇りがはっきりと表れていた。
(熊谷 徹 ミュンヘン在住)ホームページ http://www.tkumagai.de


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