ドイツの役人は、融通がきかない。しかし、日本の役人はもっと融通がきかないという話を耳にした。
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パスポートの憂鬱
ドイツで中東諸国を担当しているビジネスマンやジャーナリストにとって、パスポートを2冊持つことは常識だ。
イスラエルは、イラン、レバノン、サウジアラビアなどと国交を持っていない。イスラエルと敵対関係にある国も多い。イスラエルはパスポートにスタンプを押さないが、レバノンやサウジはスタンプを押す。イスラエルに入国する時に、係官がパスポートにこれらの国のスタンプを見つけると、レバノンやサウジで何をしていたかについて、30分から1時間尋問される。
尋問が長引いて、重要なアポイントメントに遅れる危険もある。あるノルウェー人のビジネスマンは、パリの空港でイスラエル行きの飛行機に乗ろうとしたところ、係官がパスポートにレバノンのスタンプがあるのを見つけた。
この女性は危うく飛行機への搭乗を拒否されるところだったが、係官がイスラエルの支店に電話して、イスラエル人の社員が出張予定があることを確認したために、飛行機に乗ることができた。レバノンには、イランに支援されたシーア派武闘組織「神の党(ヒズボラ)」があり、イスラエルの敵国の一つとなっている。
このためドイツのビジネスマンやジャーナリストは、イスラエルに入国する時と、レバノンやサウジに入国する時には、違うパスポートを使う。会社が「業務のために2冊目のパスポートが必要」という手紙を提出すれば、ドイツの外務省は2冊目のパスポートを発行する。
日本人のビジネスマンAさんは、イスラエルだけではなくレバノンにも出張することになった。そこで日本の外務省に対し、2冊目のパスポートを発行してもらえるかどうか問い合わせた。
すると担当者は「日本の旅券法では、1人につき、1冊しかパスポートは出せない。例外は認められない」の一点張りで、取り付く島もない。「パスポートにレバノンのスタンプがあるために、イスラエルの空港で尋問されて、アポイントメントに遅れるかもしれない」と説明しても、聞く耳を持たなかった。
私はこの話を聞いて、日本の外務省は柔軟性に欠けると思った。彼らは、規則だけにとらわれて、国際ビジネスの最前線で戦う日本の企業戦士を支援しようというサービス精神がない。
この官僚たちは、中東の複雑な政治情勢を理解していないのだろう。国際情勢に疎いのは、どうやら日本の大手メディアのデスクたちだけではないようだ。
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