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2018年03月05日14:30

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SIEMENS

エネルギー転換とジーメンスの苦悩

 私が住むミュンヘンには、総合テクノロジー企業ジーメンスの本社がある。今そこでは、重苦しい空気が流れている。同社は11月16日に、火力発電所のガスタービンなどを製造する「パワー・アンド・ガス」など3部門の従業員数を、今後数年間をかけて世界中で6900人減らすことを発表したのだ。
 リストラの対象となる社員の半分は、ドイツで働く人々だ。3部門の中で最も厳しくナタが振るわれたのがパワー・アンド・ガスで、社員の数が約2600人減らされる。同社は旧東ドイツのゲルリッツとライプチヒの工場を閉鎖するほか、エアフルト、ベルリンなどの拠点も縮小する。ジーメンスがドイツ国内にある工場を閉鎖するのは、異例だ。
 ジーメンスの決定の背景には、2011年の福島事故以降の、欧州の電力市場の急激な変化がある。ドイツ政府が進めるエネルギー転換の影響で、火力発電所向けのガスタービンの売上高が急激に減り、収益性が悪化しているのだ。
 ドイツのメルケル首相は福島事故をきっかけに、脱原子力とエコ電力の拡大を決定。再生可能エネルギーの急激な拡大により、欧州では電力が供給過剰になっている。それに伴い取引市場では、電力の卸売価格が低下。このため、最新型の天然ガス火力発電所や石炭火力発電所の収益性が大幅に悪化した。電力の供給過剰状態は、ドイツで全ての原発が停止する2022年末頃までは続くと見られている。このため、欧州の電力会社は新しい天然ガス火力発電所の建設にブレーキをかけている。2014年には、世界中で様々なメーカーに発注された発電所向けの大型ガスタービンの数は約200基だったが、今年は約130基に留まっている。世界のガスタービン市場の規模は約40%、蒸気タービンの市場は70%縮小したという推計もある。
 ジーメンスの今年のタービン受注額は、去年に比べて約30%減り134億ユーロになる見通し。収益も2016年の約19億ユーロから15%減少すると予想されている。このためシーメンスはタービンの生産キャパシティーが過剰であると判断し、大リストラに踏み切ったのだ。
 2011年に日本で起きた原発事故は、はるか離れたドイツのメーカーで働く人々の暮らしにも影響を与えているのだ。
(熊谷 徹 ミュンヘン在住)ホームページ http://www.tkumagai.de







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