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2017年08月04日14:02

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さらば、米国


6月初めに、米国のトランプ大統領が、パリ協定からの離脱を決めた。このニュースを聞いて、「米国は国の外で起きていることへの関心をどんどん失っていく」と感じた。米国が内向きになりつつあるのは、環境問題だけではない。トランプは多国間の通商協定や、軍事同盟についても批判的である。彼が関心を持つのは、二国間のディール(取引)だけだ。米国優先主義、保護主義がトランプの旗印だ。
実は、ドイツ政府の外交関係者たちは、90年代にソ連が崩壊して東西冷戦が終わった直後から、「いつか米国が欧州から手を引く日が来るのではないか」という予感を持っていた。米国を盟主とする北大西洋条約機構(NATO)と、ソ連に率いられたワルシャワ条約機構が、東西ドイツ国境を挟んで対峙していた時代には、米国議会の多くの議員たちが西ドイツに駐留する米軍の兵士たちを訪問し、激励する様子をメディアに撮影させて、本国で報道させた。
だがベルリンの壁が崩壊し、東西冷戦が西側の勝利に終わると、欧州に駐留する米軍兵士の数は大幅に減り、ドイツを訪れて兵士を激励する議員はほとんどいなくなった。
トランプは、「ドイツなど大半のNATO加盟国は、国内総生産(GDP)の少なくとも2%を防衛のために支出するという約束を果たしていない」と批判している。そして「もしも米国だけに過大な負担を強いる今の状況が続くならば、米国は欧州の防衛への貢献を減らすかもしれない」と恫喝している。
つまり「欧州から手を引く米国大統領」というリスクは、現実化しつつあるのだ。米国はもはや西側の指導者、世界の警察官としての役割を果たさないだろう。欧州諸国の米国に対する信頼感は、トランプが大統領になって以来、急激に低下した。メルケル首相がタオルミーナでのG7サミット後に、「我々欧州人は、自分の運命を自分で切り開かなければならない」と言ったのは、米国に対する不信感の表れである。彼らは「もはや米国には頼れない」と感じている。
内向きの右派ポピュリストを大統領に選んだ米国は、今後国際政治への関心をさらに失うに違いない。防衛について米国に少なからず依存している欧州や日本にとっては、米国の方針転換は、打撃である。EU諸国は、欧州で深刻な局地紛争などが起きた場合に、米国抜きでも対応できる軍事力を身に付ける努力を本格化するだろう。
(文と絵・熊谷 徹 ミュンヘン在住)ホームページ http://www.tkumagai.de



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