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2017年06月14日02:03

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メルケル四選に「王手」(上)

読者の皆さんの中には、ドイツのノルトライン・ヴェストファーレン(NRW)州へ行かれた経験をお持ちの方もいるだろう。デュッセルドルフやケルンがあり、ドイツ最大の人口を持つ州だ。
この州で5年ごとに行われる州議会選挙は、同じ年の秋の連邦議会選挙(日本の総選挙に相当)の動向を映す鏡として、世論調査機関や報道関係者から大きく注目される。ルール工業地帯を抱えるこの州は、ドイツ最大の革新政党・社会民主党(SPD)の牙城である。過去50年間で、45年間はSPDが政権を担当した。
今年5月14日に行われたNRW州議会選挙では、「政変」が起きた。これまで左派連立政権を組んでいたSPDと緑の党が大敗したのだ。SPDの前回〈2012年〉の選挙での得票率は39.1%だったが、今回は7.9%ポイントも減って31.2%となった。この得票率は、NRW州でのSPDの得票率としては、史上最低である。ハンネローレ・クラフト首相は大敗の責任を取って辞任した。また緑の党も、得票率を11.3%から6.4%に減らして敗退した。
 逆に保守・中道勢力は大きく躍進した。キリスト教民主同盟(CDU)の得票率は、前回の選挙に比べて6.7ポイント増えて、33%に達した。
なぜクラフト政権はこれほど悲惨な負け方をしたのか。その理由は、有権者が関心を持っていた教育問題、治安の改善、高速道路などインフラの整備について、クラフト政権が目立った成果を挙げなかったからである。特にNRW州では、発達障害などのために学校の授業についていけない子どもをどう救済するかが、大きなテーマとなっていた。ドイツ語も英語も話せない難民の子どもにどう勉強を教えるかも、大問題だ。そのためには教員の増強や、新しい教材の導入などが必要だ。しかしクラフト政権は教育予算を増額せず、多くの親を失望させた。
また治安の悪化も深刻な問題だ。NRW州では毎年5万件を超える空き巣被害が発生している。これは、全国で最悪の数字だ。さらに2015年の大晦日に、ケルンの駅前で数千人のドイツ人女性らが多数の難民に身体を触られたり、財布を盗まれたりした事件でも、地元警察の対応の悪さが目立った。
有権者はSPDに「不合格」の通知表を手渡した。この選挙結果には、地方政治だけではなく中央政界の動きも色濃く反映している。(続く)
(文と絵・熊谷 徹 ミュンヘン在住)ホームページ http://www.tkumagai.de




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