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2017年06月04日19:38

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ドイツの長時間労働監視システム

ドイツの監督官庁は、企業の労働時間を日本よりも厳しく点検する。労働時間の監視は、事業所監督局という役所が行う。事業所監督局は、時折抜き打ちで、企業の社員の労働時間の実態を検査する。その結果、企業が社員を組織的に毎日10時間以上働かせていることが判明した場合、事業所監督局は、企業に対して最高1万5000ユーロ(180万円・1ユーロ=120円換算)の罰金を科すことができる。
ドイツでは、この罰金が実際に科されている。2015年5月にフランクフルトの事業所監督局は、同市の大学病院に対して、「故意に労働時間法に違反した」として、4600ユーロ(55万2000円)の罰金の支払いを命じた。同病院の組合関係者は、「この病院では、2013年頃から看護師たちが1日10時間以上働かされているし、法律で決められた休憩時間も取っていない。その原因は、看護師の数が少なすぎるからだ。これは職員だけでなく、患者にとっても危険な状態だ」と指摘した。
違法な長時間労働の実態は、どのようにして明らかになったのだろうか。組合関係者は、病院側に対して労働条件の改善を求めたが、要求は受け入れられなかった。このため組合は2015年2月に、病院内の5つの部署で、看護師たちの勤務状況を独自に調査した。その結果、看護師が1日に10時間を超えて勤務したケースが210回、法律で義務付けられた休憩時間を取らなかったケースが218回あったことがわかった。組合は、この調査結果を事業所監督局に送り付けたのだ。組合関係者は、「医師や他の部署での勤務状況まで調べたら、病院全体の1ヶ月の法律違反は、約1000件に達するはずだ」と主張している。日本同様に、ドイツでも病院では長時間労働が大きな問題となっている。医師の労働組合マールブルガー・ブントのヘッセン州支部は、2015年に、同州の3つの大学病院で260人の医療関係者に対して勤務状況についてのアンケートを行った。その結果、回答者の80%が「長時間労働のために、不眠や疲労感に悩まされている」と答えた。
ドイツでは日本と比べると、労働組合が活発である。この国の労働組合は、経営側が誠実に対応しない場合、監督官庁や裁判所に駆け込むことも辞さない。フランクフルト大学病院の組合の内部告発は、そのことを浮き彫りにしている。
(熊谷 徹 ミュンヘン在住)ホームページ http://www.tkumagai.de




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