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2016年12月31日04:48

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難民危機はまだ序章


 去年ドイツには約98万人の難民が到着し、市民の間ではシリアなどの異文化圏からの人口が急に増えたことについて、不満や不安が強まっている。だがドイツの人口学者らの間では、アフリカから中東からは今後生活苦に追われて西欧に移住しようとする経済難民が急増するという見方が強まっている。現在我々が目撃している難民危機は、まだ序の口だというのだ。
 北アフリカと中東諸国の平均出生率は、2.6である。これはEU加盟国の出生率(1.6)に比べて大幅に高い。EUでは20歳以下の市民の比率は21%だが、北アフリカと中東諸国では40%に達する。
 このためドイツのある社会学者は、「北アフリカと中東諸国では、2020年までに2億人から3億人の若者たちが、母国で仕事や住む場所を得られなくなる。彼らは職がないため、結婚もできない。これらの若者はインターネットで西欧についての情報を入手し、社会保障制度が充実しており、生活水準が高い西欧への移住を試みるだろう」と予測する。
 すでにその兆候は、現われている。今年9月末にはエジプト沖で約450人が乗った船が転覆し、約200人が溺れ死んだ。この船に乗っていた人々も、欧州へ渡ろうとしていたものと見られている。エジプトではシリアのような内戦は起きていない。つまりこの船に乗っていた人々は、戦争から身を守るためではなく、生活水準を引き上げるために欧州をめざしていたのだ。いわば「経済難民」である。今年だけでも、すでに約3200人が北アフリカや中東から地中海を渡ろうとして、海の藻屑と消えているが、今後もこうした犠牲者は増え続けるに違いない。特に気候変動で中東や北アフリカの暑さが一段と厳しくなり、水不足や干ばつが深刻化した場合、食料や水を求めた民族の大移動が起きるかもしれない。欧州と中東・アフリカの間では今後も経済格差が広がると予想される。格差の拡大も、欧州への移民に拍車をかけるだろう。
 ヨーロッパ側は、去年夏の難民の大量流入以来、警戒感を強めている。ハンガリーのオルバン首相などは「我々は欧州に防壁を作るべきだ。EUはリビアに、欧州への亡命を希望するアフリカ人を収容する施設を作り、軍隊に周りを警護させるべきだ」と語っている。人権擁護はEUの基本原則の一つだが、欧州人たちの間でも、難民の数の多さの前に、自分たちの利益を守ろうとする傾向が強まっているのだ。「背に腹は代えられぬ」というわけか。理想が経済的利害の前に敗北するのを見るのは、残念なことである。
(熊谷 徹 ミュンヘン在住)筆者ホームページ: http://www.tkumagai.de

 



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