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2016年12月13日05:01

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VWと147億ドル

 フォルクスワーゲン社(VW)は、排ガス不正をめぐる不祥事の解決へ向けて、重要な一歩を記した。米国の消費者ら約50万人は、「VWが窒素酸化物の排気量を操作する不正なソフトウエアを使った車を買わされて、経済損害を受けた」と主張し、VWを相手取り北部カリフォルニア州連邦裁判所に集団訴訟を起こしていた。
この裁判を担当しているブライヤー判事は、10月25日に、VWが損害賠償金など147億ドル(1兆4847億円・1ドル=101円換算)を支払うことで和解することを認めた。原告はVWに車を修理させるか、購入価格で買い取らせることができるほか、1人につき5100ドルから1万ドルの「賠償金」も受け取る。
しかし排ガス不正は、この和解で完全に終息したわけではない。例えば、今回の和解の対象となるのは、VWが米国で売った2リッターカー、約48万台に限られる。監督官庁と裁判所は、VWグループの3リッターカー(アウディやポルシェ・カイエンなど)約8万5000台については、まだVW側のリコール案を承認していない。
さらに、大西洋を隔てた欧州でも、火種がくすぶる。VWが不正ソフトを搭載した車を最も多く売ったのはドイツなど欧州諸国だった。しかしEU域内で売られた約849万台の車のユーザーは、無料で車の修理を受けられるが、米国のユーザーとは違って、賠償金をもらうことはできない。このことについて、欧州のユーザーから「差別だ」という不満の声が上がっており、米国の原告弁護士らが欧州で新たな訴訟を起こすことを検討している。
またVWは、約6600社の株主や機関投資家からも訴えられている。米国最大の機関投資家であるカリフォルニア州年金基金や、ノルウェー国家ファンド、日独米の銀行や保険会社などはVWの株に投資していたが、去年不正発覚直後に株価が暴落したために、多額の損害を受けた。彼らはVWを相手取り、約32億5500万ユーロ(3743億円・1ユーロ=115円換算)の損害賠償の支払いを求める訴訟をドイツの裁判所で起こしている。
このようにVWの法務リスクは、まだ完全に解消していない。同社はこれらの後遺症と戦いながら、デジタル化や電気自動車の増産などの課題に取り組まなければならないのだ。その前途は険しい。
(文・熊谷 徹 ミュンヘン在住)ホームページ http://www.tkumagai.de
  



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