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2016年05月07日13:54

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欧州の連帯は崩れた





 最近、メルケル首相の表情が暗い。その理由は、他のEU諸国が彼女の難民政策を支援せず、ドイツが孤立しているためだろう。




 メルケルは去年9月にシリア難民らに対して国境を開放し、ドイツでの亡命申請を許可した。この時彼女は、他のEU加盟国も難民を受け入れてくれるだろうと考えていた。去年9月にEUは、ドイツの要望に基づき、ギリシャなどに到着した難民16万人を、国内総生産(GDP)や人口などに応じて、加盟国に割り当てることを決定した。だが彼女は梯子を外された。




 すでに多数の移民を抱えている英仏は、受け入れに消極的だった。ハンガリーやスロバキアなどの東欧諸国は、難民の強制的な割り当てを断固として拒否した。ユーロ危機の後遺症に苦しむスペインやポルトガルも、メルケルの訴えに耳を貸さなかった。16万人の難民の内、これまでに実際に割り当てられたのは1000人に満たない。




 そのことは、EUの統計にもはっきり表れている。去年7月から9月までの3ヶ月間にドイツが受け入れた難民の数は10万8305人。EUで最も多い数だ。第3・四半期にEUに到着した難民の約26%をドイツが受け入れたことになる。これに対し、フランスの受け入れ数は、1万7640人で、ドイツの6分の1。英国も1万1870人、スペインは3585人、ポルトガルは220人しか受け入れていない。




 ただし人口100万人あたりの難民受け入れ数を見ると、最も多く受け入れたのはハンガリーで、1万974人。これはドイツ(1334人)の8倍にあたる。ハンガリーが事実上国境を閉ざした背景には、同国では住民100万人あたりの受け入れ数が、EUで最高の水準に達しているという事実がある。




 100万人あたりの受け入れ数が2番目に多いのがスウェーデンで、同国は、手厚い社会福祉制度で知られるほか、第二次世界大戦中にはナチスに迫害された多くの亡命者を受け入れて、命を救った。だがそのスウェーデンも、去年12月に「受け入れ能力の限界を超えた」として、国境検査を強化して受け入れ数の制限を始めた。




 「欧州の連帯とは、平和な時だけに通用するものだったのか?危機が起きると、これほどあっさりと連帯感が失われ、加盟国の国家エゴがむき出しになるものなのか?」欧州の多くの知識人たちが、こう問いかけている。欧州精神は、第二次世界大戦後、最も深刻な危機に直面している。




(文・熊谷 徹 ミュンヘン在住)筆者ホームページ: http://www.tkumagai.de

 




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