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2016年01月18日03:02

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第二の機械時代



 マサチューセッツ工科大学(MIT)のE・ブリニョルフソン教授は、人工知能とデジタル化が人間社会に与える影響を研究対象としている。彼が2014年にA・マカフィー研究員とともに発表した「セカンド・マシーン・エイジ」という著作は、全世界に強い衝撃を与えた。(邦訳は日経BP社刊)


 ブリニョルフソン教授は、今日の人類が、18世紀に英国で始まった産業革命(蒸気機関の発明)と同じスケールの変革期を経験しつつあると主張する。今後10年〜20年間の間に、デジタル化が社会に大きな変化をもたらす。教授は、「演算素子の性能は、1年ごとに2倍に増える」という通称「ムーアの法則」が、40年以上続いていると指摘し、コンピューターとロボットの性能は、今後も飛躍的に発展すると予測。


 ブリニョルフソン教授は、「グーグルやフェースブックの創業者のような、IT起業家が巨額の富を築く一方で、デジタル化のために失業する市民も増えるので、貧富の差は今後拡大する」と指摘する。彼は「定型化され、パターン化した労働は、知識産業、肉体労働を問わず、機械に取って代わられる」と考えている。


 教授によると、ロボットは、複雑なコミュニケーションや、様々な外界のパターンを瞬時に認識すること、柔軟性を必要とする仕事は苦手である。ロボットはチェスの世界チャンピオンを打ち負かすことや、90ヶ国の言語を自動翻訳することはできるが、テーブルの上に散らばった雑誌や書類を片づけたり、料理を作ったりすることはできない。


つまり、人間にとって難しいと思われる仕事は、機械にとっては簡単で、人間にとって簡単と思われる仕事は、難しいのだ。このためブリニョルフソン教授は、庭師やコック、小説家などの仕事は、当分機械に奪われることはないだろうと予想している。
 さらにブリニョルフソン教授は、今後は学校教育の中で、機械の得意な能力を人間に教えることはやめて、批判力や分析力、創造性の育成に重点を置くべきだと訴えている。


 いまドイツ連邦政府や産業界とともに、工業生産のデジタル化プロジェクト「インダストリー4.0」を進めている。メルケル政権は「未来の工場は、無人にはならない。人間は現在よりも創造的な仕事を行うようになる」と主張しているが、ブリニョルフソン教授の考え方と重なる部分がある。
 SFが現実化する世界は、すぐ目の前にある。気がついたら機械に仕事を奪われていたということにならないように、創造性を磨くことが大切だ。


(文・熊谷 徹 ミュンヘン在住)筆者ホームページ: http://www.tkumagai.de
 


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