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2016年01月03日21:00

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難民危機・メルケルの苦悩 (中)



 現在欧州は、第二次世界大戦後最も規模が大きい難民流入を経験している。これまで圧倒的な人気を誇ってきたドイツのメルケル首相は、難民政策をめぐって批判の矢面に立たされている。


 保守系日刊紙フランクフルター・アルゲマイネ紙(FAZ)も、「メルケルの難民政策は、失敗だった。亡命権に上限はないという首相の発言は、多数の難民をドイツに引き寄せる原因となる。主権国家が、自分の国に外国人を何人受け入れるかについて決定するのは、当然のことだ」と珍しく首相を批判した。ドイツの知識層に最も読まれている有力紙が、第一面の社説で首相の決定を「失敗だった」と指摘するのは珍しい。


 メルケルに対する国民の支持率も、低下し始めた。公共放送ARDが9月末に行った世論調査によると、回答者の51%が「難民急増に不安を抱いている」と答えた。1ヶ月前の調査に比べると、不安を抱いている回答者の比率が13ポイントも上昇した。


 さらにメルケルへの支持率は、9月から10月までの1ヶ月間で9ポイント下落して、54%となった。これは、2011年以来最低の数字だ。逆に、「メルケルの難民受け入れの決定は間違いだった」と批判したキリスト教社会同盟の党首ゼーホーファーに対する支持率が、11ポイントも伸びた。彼は、難民数に上限を設け、憲法が保障する亡命権を制限するよう求めている。


 メルケルは国民からの批判に対し、「現在は緊急事態だ。困っている人々に援助の手を差し伸べたことについて、私が謝罪しなくてはならないとしたら、ドイツは私の国ではない」と珍しく感情を露にして反論した。メルケルは「私は何度でも言う。ドイツは、多数の難民が入って来ても、十分に対応できる」と強調した。さらに、「ドイツの憲法が保障する亡命権に上限はない」と断言した。


 ドイツでは、「冷静で計算高い政治家として知られてきたメルケルが、感情に基づく決定を行った。メルケルが変わった」という意見が強い。
 J・ガウク連邦大統領は、10月3日に行った演説の中で、「我々は難民を支援する準備がある。しかし、我々の能力には限界がある」と述べ、メルケルの「亡命権に上限はない」という言葉に反論した。メルケルは、事実上孤立無援の状態にある。(続く)


(文・熊谷 徹 ミュンヘン在住)筆者ホームページ: http://www.tkumagai.de




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