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2014年12月21日19:00

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独のサッカー熱

今年7月に書いた原稿です。
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 7月13日にブラジルで行われた、サッカーワールド・カップ決勝戦で、ドイツはアルゼンチンを下して、24年ぶりに優勝した。延長戦でドイツの選手がシュートを決めた瞬間、ミュンヘンの住宅街では「ウォーッ」という人々の歓声が響き渡った。この夜、人々は花火や爆竹、ラッパを鳴らして、W杯制覇を祝った。夜中になっても人々は自動車のクラクションを鳴らして、目抜き通りを行進、シャンペンを開けて、ドイツチームの敢闘をたたえた。

 この日は、ドイツ連邦政府のアンゲラ・メルケル首相とヨアヒム・ガウク大統領がそろってブラジル入りし、現地で応援。メルケル首相は前の週に中国を訪れたばかりなのに、今度はブラジルへ飛んだ。しかも彼女がブラジルでサッカーを観戦したのは、本大会で2回目である。

首相と大統領がそろって現地で応援するとは、気合が入っている。ドイツの政治家にとって、サッカー選手の応援は支持率を引き上げるという意味で、益々重要になりつつある。首相がドイツのナショナル・チームを現地で激励する模様がテレビで放映されれば、人々は首相に好感を抱く。

 ドイツのサッカー熱が近年益々高まる中、政治家が市民の好感度を高めるためには、サッカー選手への応援を怠ることはできないのだ。

W杯の期間中、ドイツでは自動車に国旗を取り付けたり、アパートの窓や庭に国旗を掲げる市民や、ひいきの選手の名前が入ったユニフォームを着て町を歩く市民が目立った。

以前のドイツでは、戦争中の経験などから、ナショナリズムを忌避する傾向が強く、人々が国旗を堂々と掲げることは少なかったが、2006年のW杯がドイツで行われてからは、市民の国旗コンプレックスが突然なくなった。政府も、「サッカーの大会で市民がドイツ国旗を掲げるのは、健全なナショナリズムだ」として、この傾向を歓迎している。

 他のヨーロッパ諸国がユーロ危機の後遺症に苦しむ中、ドイツだけは経済的に絶好調であるだけでなく、サッカーでも世界一の座を勝ち取った。「ドイツの独り勝ち」について、今後周辺国がどのような感情を持つか、いささか気になるところだ。

(文と絵・ミュンヘン在住 熊谷 徹)筆者ホームページ: http://www.tkumagai.de
 

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