mixiユーザー(id:6002189)

2014年12月07日17:00

257 view

テロリストと核物質



 7月上旬に内戦に揺れるイラクから届いたニュースは、世界中の治安当局の関係者を震撼させた。イラクのマリキ政権の打倒をめざす、イスラム過激組織「イスラム国家(IS)」が、モスル大学から約40キログラムの放射性物質を盗み出したのだ。

 マリキ政権は国際原子力機関(IAEA)にこの事実を報告し、支援を求めている。幸い、ISが盗み出したウランは濃縮度が低いので、この物質が核爆弾の製造に使われる危険は低いことがわかった。しかしIAEAでは「兵器の製造に適していなくても、放射性物質がテロリストの手に渡ることは、重大な問題だ」という見解を打ち出している。

 特にテロリストがプルトニウムのように、毒性の高い放射性物質を入手することは、大きな問題だ。たとえ核爆弾を作ることができなくても、通常の爆薬をプルトニウムの粉末を入れた容器に縛り付けて爆発させれば、発がん性のあるプルトニウムがばらまかれる。いわゆる「ダーティー・ボム(汚い爆弾)」が大都市で使われた場合、深刻な放射能汚染が発生する。

 イラクにプルトニウムはないと考えられているが、やはりイスラム過激派の活動が目立つパキスタンには存在する。同国は核兵器も所有しているので、テロリストが核兵器の保管されている基地を占拠することは、欧米諸国にとって最悪のシナリオの一つである。

特に2001年にテロ組織アルカイダによる同時多発テロを経験した米国は、核物質を使ったテロ攻撃に最も神経をとがらせている。

 「アラブの春」以来、中東地域は不安定性を増している。特に核兵器や原子力発電所がある国々での政情不安は、核物質がテロリストに奪取される危険を高める。

 日本は、高速増殖炉を使った核燃料サイクルの開発をめざしてきた。このため、国内には核兵器を作るのに十分な量のプルトニウムが保管されている。こうした核物質がテロリストの手に落ちることがないように、日本政府は万全の態勢を整える必要がある。

文と絵・ミュンヘン在住 熊谷 徹)筆者ホームページ: http://www.tkumagai.de
 
 



4 1

コメント

mixiユーザー

ログインしてコメントを確認・投稿する