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2014年12月06日05:41

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ドイツ「脱原子力」の次は「脱石炭」?


 12月に入って、気温が急に下がってきた。寒さが厳しい北国ドイツでは、暖房や短い日照時間のために、冬に電力需要が最も高くなる。

こうした中ドイツでは、将来の電力市場をどのように変更するかについて、新たな議論が持ち上がっている。

*火力発電所の強制閉鎖?

 そのきっかけは、11月末にメルケル政権が、二酸化炭素(CO2)の排出量を削減するために、電力会社に褐炭・石炭火力発電所の一部を、半ば強制的に閉鎖させることを提案したことだ。

 連邦経済省のジグマー・ガブリエル大臣は、RWE、E・ON、バッテンフォール、ENBWなどの電力会社に対し、2020年までにCO2排出量を少なくとも2200万トン削減することを、法律で義務づけることを検討している。

ガブリエル大臣は、「どのような方法によってCO2排出量を2200万トン減らすかは、電力会社が決めればよい」としている。だが実際には、電力会社がCO2排出量をこれだけ減らすには、火力発電所の一部を止めるしかない。したがって、政府はは実質的には、電力会社に対して、褐炭・石炭火力発電所の一部を、法律によって強制的に閉鎖させようとしているのだ。

 ガブリエル大臣は、なぜこのような強硬手段を打ち出したのか。その理由は、ドイツ政府がCO2削減目標を達成できない可能性が強まっているからだ。

地球温暖化の防止を重視するドイツ政府は、2020年までにCO2排出量を1990年比で40%削減することを目標としている。しかし、ここ数年間電力会社は、減価償却の終わった古い褐炭・石炭火力発電所をフル稼働させて、収益性を確保しようとしている。

このため2013年のドイツのCO2排出量は、前年に比べて1200万トン(1,2%)増加してしまった。2013年の発電比率の内、45,5%は褐炭と石炭が占めている。その比率は、前年に比べて1,5ポイント上昇した。現在のままの状態が続くと、ドイツのCO2排出量の90年に比べた削減率は、32%〜35%にとどまると予想されている。経済省が、褐炭・石炭火力発電所の強制閉鎖を検討しているのは、そのためだ。

 褐炭は、ルール地方や旧東ドイツの露天掘り鉱山で採掘できる。このため、国産のエネルギー源としては最も安い。しかし、天然ガスに比べるとCO2の発生量が高いので、緑の党や環境保護団体は褐炭火力発電所を「クリマ・キラー(気候を害する物)」と呼んで、閉鎖を求めている。

*褐炭・石炭から天然ガスへ

 政府が褐炭・石炭火力発電所の部分的な閉鎖をめざすもう一つの理由は、電力の過剰供給量を減らして、より環境にやさしい天然ガス火力発電所の稼働率を増やすことだ。

 ドイツ経済研究所(DIW)・エネルギー部のクラウディア・ケムファート部長は、褐炭・石炭火力発電所の閉鎖がドイツの電力市場に与える影響について、経済省のために鑑定報告書を作成した。

 現在ドイツでは再生可能エネルギーによる電力が増えているために、電力卸売市場での価格が下がっている。このため、新型で燃焼効率が良い天然ガス火力発電所の収益性が下がっており、電力会社はこの種の発電所よりも古い褐炭・石炭火力発電所を積極的に使う傾向がある。
 
ケムファート氏は、「褐炭・石炭火力発電所の一部を閉鎖すれば、電力キャパシティーが減るので、卸売市場の電力価格は、1キロワット時あたり1セント上昇する。電力価格が上昇すれば、天然ガス火力発電所の収益性と稼働率が回復するので、一挙両得だ」と主張する。

つまり政府は、電力の値段を上げることによって、CO2排出量の比較的少ない天然ガス火力発電所の使用を促進しようとしているのだ。

*産業界は猛反対

 一方、産業界はガブリエル大臣の提案に反発している。ドイツ産業連盟(BDI)のマルクス・ケルバー会長は、「もしもガブリエル大臣の提案が実行された場合、2020年までに電力の卸売価格は約20%上昇し、電力を大量に消費する企業のエネルギー・コストは15%増える。2020年から10年間にドイツの国内総生産は約700億ユーロ減り、7万4000人分の雇用が脅かされるだろう」と述べ、政府の計画に強く反対した。

 BDIは、「褐炭・石炭火力発電所を閉鎖した場合、ドイツ産業界の競争力が損なわれる。さらに、結局ポーランドなどの外国から、石炭によって作られた電力がドイツに輸入されるので、欧州全体で見ればCO2は減らない」と述べて、この提案に疑問を投げかけた。

 また電力会社のロビー団体「ドイツ・エネルギー水道事業連邦連合会(BDEW)」も、「エネルギー業界は地球温暖化防止のために今後も貢献する用意があるが、ガブリエル氏の発電所閉鎖案については、欧州全体の視点から考えるべきだ。さらに、電力の安定供給や雇用、景気への影響にも配慮するべきだ」と述べ、慎重な姿勢を示している。

 多くの科学者は、「ここ数年間世界各地で観測されている平均気温の上昇や、海面の上昇、気象関連の自然災害は、CO2排出量の増加と関連がある」と主張している。CO2排出量削減が緊急の課題であることは間違いない。同時に、政府は環境保護コストが経済成長にブレーキをかけることも、防がなくてはならない。

ドイツ人たちは、このジレンマをどのように解決するのだろうか。

筆者ホームページ: http://www.tkumagai.de

ドイツニュースダイジェスト2014年12月5日号 再掲

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