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2020年01月29日17:21

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マーク・エヴォニア「ジャック・カービー アメコミの“キング”と呼ばれた男」

キャブテン・アメリカやソーやハルク、ファンタスティック・フォーやエターナルズ、或いはダークサイドの生みの親ジャック。カービイの全てを書いた一冊。又、カービイはアメコミの黎明期から仕事していた人物なので、この本は同時にアメコミ概史でもある。
この本で初代ブルービートルやアーチーのザ・フライ、DCのチャレンジャーズ・オブ・ザ・アンノウンもカービイだったと初めて知った。
わたしが知っていたのはマーヴェルでヒットシリーズを幾つも手がけた後、行き成りDCに移り(ダークサイドもこの頃)又、マーヴェルに戾った事くらいだったが、その辺りの事情(編集陣との確執など)も全て書かれている。
スタン・リーがまだ使い走りの頃、既にカービイはマーヴゥル(の前身)で仕事をしていて、スタンがカービイにコーヒーを持って行ったりしていた話やファンタスティック・フォーのシングがカービイ本人がモデルである話など、色々と興味深い。
マーヴェルヒーローはスタン・リーが生み出した様に喧伝されているが、アイデアはカービイとの話し合いで生まれたものが多く、ソーにしても、その前にカービイのアイデアで雷神のハンマーを手にした為に雷神の力を持ってしまった男の短篇を描いていた事が有ったから生まれたと云う。面白いのはスパイダーマンのアイデアもそうした中から生まれたもののカービイのデザインが氣に入らなかったスタン・リーがスティーヴ・ディッコに振ったのだとか。
スタン・リーもジャック・カービイも自分の功績を強調する傾向が有る為、時には兩者とも、このヒーローのアイデアは最初に自分が出したと譲らなかったりしていたらしいが、カービイが居なければ少なくともファンタスティック・フォーやソーは生まれなかっただろう。又、シルバー・サーファーは完全にカービイのキャラクターだったらしい。但しカービイはギャラクタスに依ってエネルギーから生み出された人造生命体と考えていたらしい。そしてカービイは自分の生み出したヒーローに愛着と執着が有り、シルバー・サーファーの単独シリーズが始まった時、怒ったらしい。元々、宇宙人だった事にされ、絵もジョン・ビュッシーマが担当したから。もっとも、読む側から云わせて貰えばジョン・ビュッシーマは線が細く絵柄が上品に成るので、迫力は有るが泥臭さを持ったカービイの絵より良かった。
カービイは嘗てジャスティスリーグ・オブ・アメリカなどをノンクレジットで手伝った事が有ったらしいが、DCに移ってフォース・ワールドを手掛けた時、編集陣からのウケは惡かったらしい。日本のアニメも嘗ては自分の線と云うものを持たない人たちが居り、寧ろ他人のデザインしたものを如何に再現して描けるかがポイントだったらしいが、昔のアメコミもそうだったらしく作家性が出てしまう事は嫌われていたらしい。DCは特にそれを引き摺っていたらしく、カービイの個性ある絵自体が嫌われていたとか。
後に時代が変わって、一度マーヴェルに復帰後、DCの仕事を受けた時にはカービイに好きな様に描かせて貰える樣に成っていたと云う。結局カービイの絵で育った人々がファンに成り、その一部が製作する側に成っていたのが大きいだろう。
此処迄アメコミに多大な功績と影響を与えた人物は他に居まい。


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