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2019年12月16日17:17

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アリエット・ド・ボダール「茶匠と探偵」竹書房

漢字やお茶が有りふれた中華風文化圏のシュヤ宇宙を舞台にした作品集。
漢字が当り前の中華風宇宙としてはアニメの「カウボーイ・ビバップ」が想い起こされるが、あちらが香港風だったのに対し、こちらは完全に中国。「科挙」なども有ったりする。しかし、そこに差別される少数民族の樣な𢒈で南米先住民が居るのが面白い。巨大な経済力を持つギャラクティクは恐らく白人文化圏と想われるが、主体が支配者も被差別側も黄色人種文化圏に由来しているのが面白い。祖先を大事にするのも南米やアジアの黄色人種文化圏の特徴。
シュヤ宇宙ものの特徴の一つが自分の姿を他の姿に見せるもので、今日ではアニメでもしばしば見られるアイデアだが、中にはそれで引き籠もりよろしく自分の本当の姿を夫にも見せようとしない女性が居たりする。突き詰めるとディストピア方向に行きそうなのだが、作者はそこ迄はせず、そうした者も居る・・・程度に留まっている。
シュヤ宇宙のもう一つの特徴は魂を有する宇宙船。マキャフリイの「歌う船」シリーズと同じアイデアだが、船に成っても親兄弟の繋がりを大切にし、友人も居り人権を所有している。又、SFで人工知性を備えた宇宙船が小型ロボットを自分のアバターとして用いるケースが有るが、この「生きた」宇宙船たちも同樣。
今後もこの宇宙の物語が翻訳されて行く事を願う。

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