ベートーベン 交響曲 第3番「英雄」
クシシュトフ・ウルバンスキー指揮 ノルウェー・トロンハイム交響楽団 (2012年ライブ)
https://www.youtube.com/watch?v=7w-Qplolyt0&t=1852s
ライブ当時のウルバンスキーは32歳。指揮者としては若手中の若手。
そうなると、大体は少々荒っぽい仕上がりになってしまうか、海戦山千のオケのメンバーからすれば、若いの頑張ってねー、とばかりに、指揮者をほぼ無視、とりあえず曲を流す、そうなると誰が指揮しても同じ、という演奏になってしまう。
つまりベテラン、または巨匠と呼ばれる指揮者の演奏に比べると、のっぺらー、とした何の味もない、面白くもなんともないものになってしまう。
しかしウルバンスキーの指揮はオーケストラに振り回されず、きっちり統率したものであり、まさしく馬上のナポレオンが、戦場を颯爽と駆け抜けるが如き演奏を聴かせてくれる。
いろいろ聴いた中でも、最速ではないかと思うテンポである。
ただ速いだけの演奏なら他にもあるが、ウルバンスキーの「英雄」は楽曲のダイナミズムを駆使し、クレッシェンド、デ・クレッシェンドがわかりやすく随所に現れる。
ウルバンスキーの解釈もあるのだろう、譜面指定に関わらず、フレーズの山場をきっちり測り、その頂点を目指して駆け上がり、そして沈み、またぐいぐいと駆け上がる。
その頂点をどこに置くか、ポイントを予め計算し尽くし、大編成のオーケストラを見事に統率、キレ味の良い音楽で、スリリングにドライブさせていく。
その手腕は素晴らしい。
とあるロック・ミュージシャンが、ロッカーの元祖は誰か?と訊かれ、ベートーベンだ、と真面目に答えたという逸話があるが、ウルバンスキーの「英雄」を聴けば、なるほどそうかもしれない、と思う。
尚、2011年7月、福島の原発事故の影響でキャンセルした指揮者の代役として来日。「こういう時期に自分の音楽で日本の人たちを勇気づけられたら、と思った」と語っていた。
2021年現在、ウルバンスキーは40歳。今後最も注目できる指揮者である。
彼のコンサートがあれば、是非行ってみたい。
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