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2020年10月16日07:48

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95歳の料理家、辰巳芳子の警告「日本はすごく貧しい」

辰巳芳子さんのはなし、すごいよ。。


 料理家の辰巳芳子さん(95)は、日本の食文化を豊かにするために提言を続けてきた。戦前から「日本の食料がいかに弱いかというのをずっと体験してきた。骨身にしみて知っているんだ」という辰巳さんが、現代の食の危うさを語った。

 ――戦争のあとから比べると、食卓は豊かになりました。私たちは今、何を食べたらいいでしょうか。

 そうね、自分も食べ物も、自然の一環であるというのを忘れてはいけない。自然とかけ離れて食べれば、体の養いにはならないのよ。

 自然の中にいて、季節ごとにできるものをみれば、何を食べればいいかは、自然に分かってしまう。それを食べるよりほかないんだから。

 そして、地球の在り方とあわせて食べていくこと。地球を宇宙の中にすえて考えていかないと、私たちは食べ損なっちゃうと思う。

 ――宇宙との関係というのは、具体的にはどういうことですか。

 太陽とか水、空気とか。そういうね、とっても原点的なことを謙虚に考えて生きなければならないと思うんだ。それを汚さないように。一番汚して、取り返しがつかないのは原子力だろうね。そういうもので根本的なところをいじめないようにしないといけないと思います。

記事後半では、辰巳さんは「この国は本当に持たざる国」と考える理由を語っています。煮干しやシイタケの料理法に触れながら、若者への助言もしています。

 ――辰巳さんは社会意識がとても高い料理家だと感じます。

 私は社会意識が強くて、並の強さじゃないと思う。それは多くの若者が国のために死んだからです。

 あの若者たちの死を無駄なものにしたくないんだ。それが私の意識の中にはっきりある。
 75歳の頃にフィリピンまでいきました。どんなところで日本の若者が戦ったのか、見てこようと思って行ったんです。小さな南洋の島だったけれど、日本の兵隊は草の葉っぱの露をなめながら戦っていた。

 見たらテニスコートがある。あそこでテニスをやったんですかってきいたら、そこの下は米軍の兵隊が使うプールだったそうです。

 米軍の兵隊はプールに水をもっていた。日本の兵隊は水がなくて草の裏の露をなめていた。その差をもって、日本の兵隊が戦っていた。

 だから私は、自給率を高めるために、大豆を育てる「大豆100粒運動を支える会」を起こしました。コメはどうかこうか、国が維持していくでしょう。でもこの国の政府は、大豆まではできない。

 この国はたんぱく質が皆無だよ。魚も昔の何分の一かしかとれない。家畜はっていうと、もっと持ってない。豆よりほかしょうがないんだ。豆がなければ、私たちの子孫は生きていられませんよ。せめて、大豆ぐらい持ってないと、どうしようもないんだ。あれは最低の線なんだ。

 この国はものすごく貧しいよ。とっても貧しいんだよ。

 ――今の日本では、貧しいというのはなかなか実感できません。

 食料自給率は40%を割っているし、国産大豆は7%しかない。和牛といっても、エサも輸入に頼っています。

 私はね、昭和16(1941)年ぐらいから、日本の食料がいかに弱いかというのをずっと体験してきた。いかに危ない国かっていうのを骨身にしみて知っているんだ。

この国は本当に持たざる国ですよ。何か起きれば、すぐ手のひらを返したように食べられなくなります。

 ――若い世代は自給率の低さは頭で分かっても、実際に感じることは難しいと思います。関心を持つきっかけはありますか。

 いまの日本を、次の時代に渡していくことは、本当はしてはいけないと思う。こういう日本をもらっても困るだけです。何か言ってあげられることといったら……。

 まずね、炊飯器を使わないでご飯をたける人になってごらんなさい。

 それからね、煮干しでダシをひいてごらん。それがどこまでやれるか、自分を試してみることだ。そして煮干しをから煎りしてかじるんだ。煮干しをかじれる人になれるかどうか。そう思わない?

――思います。

 とっても皮肉な提案だと思うけれど、自分を試してご覧なさい。私たちの持っているものは、煮干し以外ないんです。その煮干しを扱えなかったら、命は危ないな。

 ――料理をするときに、どうしても食材を信じ切れずに手を掛けすぎてしまうことがあります。

 やっぱり、食材そのものをよく観察することよりしょうがない。ものの本質を理解しようとすることです。我を押さえて、本質に自分を従わせないといけないですね。

辰巳さん「シイタケスープ」のレシピ

《シイタケのスープ=作りやすい分量》 
日本産原木干しシイタケ30〜40グラム、昆布5センチ角3、4枚、梅干しの種2、3個、水6カップ(1)シイタケと昆布を分量の水に浸し1時間戻す。(2)シイタケ、昆布、梅干しの種を別の容器に入れる。戻し汁は鍋に移し火にかける。(3)蒸気の上がった蒸し器に(2)の容器を入れる。熱した戻し汁を容器に注ぐ。蒸し器のふたをして、40分ほど蒸す。(4)蒸し上がったら、すぐに昆布、シイタケ、梅干しの種を取り出す。スープを器に注ぐ。

 『お肴春秋』にはシイタケのステーキを書いてあるけれど、何も難しいことはない。自然にシイタケを作っている人がいたら、それを買って、あんまり水を飲まさないように清潔に洗って、汁気を取って厚手の焼き鍋に多くも少なくもなく油を入れ、シイタケを皮のほうから寝かせて置いて、あんまり強くない火で焼いてみるんだね。

 ――辰巳さんは本を書かれるときに、どういう風に相手を思っていらっしゃるのですか。

 そうね、具体的に、どういう人ってことはないです。当たり前の、誰でも持つはずの、悩みとか疑問とかを想像して書いています。

 ――一人暮らしの方が増えています。自分で自分に料理を作るということを、どう考えていますか。

 私も一人暮らしですよ。

 でもね、人間は、幸いに愛さずにはいられないのよ。愛されることも、愛することもなく生きることなんて、できませんよ。それは詭弁(きべん)だ。その状況に置かれたら、耐えがたいことになっていくよ。

 人間はそのようにできていません。自分の命に逆らうようにすることはないよ。もっと素直に生きていかないと。食べ損なっちゃうよ。(構成・高津祐典)

インタビューした食に携わる2人
 インタビューは、食に携わる2人が担当しました。略歴は以下の通り。
     ◇
 篠原祐太(しのはら・ゆうた) 1994年、東京都生まれ。昆虫食歴22年。コオロギラーメンやコオロギビール、タガメジンなどを発売。今年6月、東京・日本橋馬喰町に昆虫食レストラン「ANTCICADA(アントシカダ)」をオープンした。

 山口祐加(やまぐち・ゆか) 1992年、東京都生まれ。自炊料理家。慶応大卒業後、出版社などを経て独立。料理教室などで自炊の楽しみを伝える活動をしている。著書に、週3日の自炊で食材を使い切る『週3レシピ』(実業之日本社)。
(朝日新聞10 月15日)
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