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2022年06月25日10:22

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コサークの反転攻勢【東部戦線の山場が近い】

■セベロドネツクとリシチャンスクからウクライナ軍の「戦略的撤退」の背景■

6月23日、ロイターなどがルハンシク州知事のセルビー・ハイダイ氏がウクライナ軍(以下烏軍とします)がセベロドネツク、リシチャンスクから住民の退避路を確保して上で撤退すると述べた。ロイド・オースチン米国防長官も24日にウクライナ軍がセベロドネツクからも撤退した事を既に確認している。

かねてより烏軍は東部最大の要衝・スラビャンスクとクラマトルスクの防備を固め、戦略的撤退をする積りだろうと述べて来た。マリウポリでは大消耗戦で敵味方大変な損耗となった。

ここへ来て漸くふたつの街を損耗の末、ロシア軍(以下、ロ軍とします)に明け渡す覚悟を決めたゼレンスキー政権の意図の背景にはふたつあると考えられる。

・リシチャンスクに通じる補給路をロ軍に絶たれそうになっている

・セベロドネツク攻略によるロ軍の損耗が激しかったから

ではないだろうか。

特に第二の理由についてだが、BBCなどでは既にイギリスの国防省が6月22日、親ロシア派勢力は55%の兵力を失っていると分析した。

だがこれだけの苦渋の選択を可能にした理由は別にあると考えている。

AP通信などによれば、6月18日に漸く米軍のM777りゅう弾砲が東部に実戦配備されたとのことである。

更にAFPなどによれば、6月23日に待ちに待ったハイマースが実戦配備されたと報じた。
実際、これについてはオレクシー・レズニコフ烏国防相がロイド・オースチン米国防相にツイッターで謝意を述べているほどだ。

ここへ来て何と隣国のルーマニアがウクライナが保有する東側兵器の規格・152mmの弾薬を安定供給することを表明した。

これまで烏軍は東側諸国の規格、152mm砲にあらゆる作戦を合わせていた。ところがウクライナを支持するNATO諸国の規格は155mm。たかが3mmの違いではないかと我々のような軍事にトウシロな人間は思ってしまいがちだが、双方に互換性は無い。もし152mm規格の烏軍の弾薬が尽きてしまえば、補充もメンテもままならない。破棄して豊富な155mm規格のNATOに切り替えるしか手はなかった。この点がさしもの烏軍といえども非常に厳しかったのである。

しかしルーマニアのオファーで既存の兵器も使用出来ることとなった。

通常兵器で双方が戦い続ける限りという話にはなるものの、最早「勝負あった」という感じではないだろうか。

ゼレンスキー大統領としてはセベロドネツクをロ軍に明け渡すのは相当の苦渋の決断だったとは考えられるが、決断を踏み切らせるだけの威力がハイマースなどの西側の155mm砲にはある事は間違いない。何しろロ軍が保有しているりゅう弾砲はせいぜい50kmだが、ハイマースなどは80kmは届く。この「リーチ」の差は無視出来ない。

アメリカだけでなく、ウクライナ支援には腰の重かったドイツ、フランスもここへ来て供与している。

〜主要国が提供した自走式の155mm規格のりゅう弾砲〜

アメリカ:ハイマース

フランス:カエサル。ハイマースと同様に発射後、或る程度移動出来る軽敏な機動性を兼ね備えている。

ドイツ:パンツァーハウビッツェ2000

■スラビャンスク・クラマトルスクが東部戦線の山場■



アメリカの戦争研究所のISWも烏軍の東部最大の要衝はスラビャンスク、クラマトルスクだと認識している。ここが落ちることになると、ロ軍は損耗の激しい中、再びキーウ(キエフ)攻略に戦略を切り替えて来るだろうと分析している。

地図を見て頂くと分かるが、この2つの街が陥落した場合、ロ軍はウクライナ第二の都市・ハルキウ(ハリコフ)も陥落させ、再びキーウ(キエフ)を包囲する積りではないか。

逆にウクライナ側とすれば、スラビャンスク、クラマトルスクを死守するとなると、戦術核を使用する以外、ロシアは中期的に停戦交渉に応じるしか手が無くなって来る。

問題はロ軍にどれだけ余力が残っているかだ。

セベロドネツク、リシチャンスクから撤退を確認したアメリカのオースチン国防長官が「プロフェッショナルで戦術的な撤退をしている」と評価し、「ロシア軍をとても長い間、非常に限られた地域にとどめている」とも述べた。ロ軍が焦土作戦を展開しているのに対し、少ない弾薬を効率的に使用し、ピンポイントにターゲットを効果的に狙っているという意味ではないか。実際将官クラスが12人以上戦死している。この事はロシアのプーチン政権から「無期限入国禁止」の通告を受けた、筑波大の中村逸郎氏も日本の民放で

「プーチン大統領からせっつかれているのは分かるが、不用意に前線に出て、それをウクライナ軍に察知されて狙撃され、将官たちは戦死している。」

と述べている。このことをオースチン国防長官は述べたのだろう。

ウクライナ・ロシア戦争は東部にばかり注目が集まっているが、南部戦線、黒海戦線もある。地図で見るとロシアが余りにも広大な国土なので、ウクライナが小さく見えてしまうが、それでも日本の面積の1.6倍もある。それゆえこの3つの戦線の状況を俯瞰的に見る必要がある。

南部戦線は烏軍が優勢だが、ヘルソン北方15kmに烏軍が待機しているという情報を先週に得たものの、今のところ情報が出ていない。ということはこれから大規模な作戦が実行されるので、公開されていないのではないか。最も考えられるのは先述したりゅう弾砲が着々と実戦配備されている事だろう。

もう一つの黒海戦線は先週あたりからデンマークなどより供与されたハープーンミサイルが早速戦果を挙げている。実戦配備後、早くもロシアの曳航船(タグボート)を撃破し、南部のロシアに占領された工場にも打撃を加えている。更には愈々黒海艦隊の拠点・スネーク島にも本格的に攻撃を開始している。

東部のセベロドネツク・リシチャンスクに展開するロ軍は今後西進して、ウクライナ軍東部の最大の要衝・スラビャンスクとクラマトルスクに進軍するだろう。その一方でこの2つの拠点よりも北にあるイジュームにもロ軍がいる。南北から包囲し、総攻撃する作戦だろうが、烏軍はそれを牽制する狙いか、イジュームを西部からこれまでは威力偵察や小競り合いだったのが、NATO諸国より実戦配備されたりゅう弾砲で攻撃を仕掛けている。スラビャンスクほどの強固な要衝ではないものの、イジュームを簡単に陥落させることが出来るとは烏軍も考えていないので、矢張りスラビャンスクを攻撃させない為の牽制だろう。

先日アメリカの軍事衛星がイルクーツク付近で40台の戦車が鉄道に載せられて西に向かうのが捕捉した。30台はT-62だったという。最早ロシアは「使える物は核兵器以外何でも使え」というスタンスに変わって来ているところを見ると、ウクライナ東部の最大の要衝・スラビャンスクに総攻撃はそう度々出来ないのではないだろうか。もしロ軍がスラビャンスクを完全制圧する積りであれば、南部は見捨てるしかないが、そのようなことが出来るはずもない。

歴史に省察を求めるのであれば、戦国時代、武田勝頼の猛攻にしのぐ徳川家康とダブって見える。

徳川家康は江戸幕府を開いた人物だが、さしもの軍事的には戦国最強と謳われる武田が亡ぶまでは三河・遠江全域を掌握するには至らなかった。それどころか根拠地の浜松に近い高天神城は落とされるほどだった。同盟国の織田信長が新兵器をひっさげて長篠の戦で漸く撃退出来たのである。

武田勝頼=ロシア、徳川家康=ウクライナ、織田信長=アメリカやNATO、高天神城=セベロドネツク、浜松城=スラビャンスク、新兵器=ハイマースなどの米・欧からの自走式りゅう弾砲と置き換えてみる事が出来るかもしれない。

一刻も早く戦争は終わらせねばならない。

先述した中村逸郎氏やイギリスの国防省などの試算だが、ウクライナの復興には日本円で143兆円もかかるという。経済、金融制裁でテクニカルデフォルトが必至のロシアのルーブル。この状態で焼け野原で破壊し尽されたウクライナを復興するだけの経済的な余裕がロシアにあるのだろうか。占領と支配は別物だ。更に今回の戦争で、軍事産業だけがウハウハの状態にある。それも米・欧の企業ばかりだ。これは常日頃からアメリカを仮想敵と見做して来たプーチン大統領にとっても最も望ましからぬ事態のはずだ。

最後まで御覧頂きまして、ありがとうございました。
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