■ロシア軍７隻、伊豆諸島を航行＝別艦隊は宗谷海峡通過―防衛省
(時事通信社 - 06月18日 00:31)
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■正しく、怖がる事が重要■
大義も正義も無い、プーチン大統領が始めた「特別軍事作戦」という名のウクライナ侵攻。先の見えない泥沼の戦争にはまり込んでしまった。今月末には米英烏の三か国の国防省の分析によれば、ロシア軍の戦死者は4万3千人ぐらいに達するという見通しを示した。あのアフガニスタン侵攻が10年で1万4千人とされている。開戦以来たった3か月半でこの数字は膨大な損耗である。
ウクライナを侵略したロシアに対して我が国も経済制裁を科している。これに対する牽制が続いている。
4月1日には、下院副議長のセルゲイ・ミロノフが「ロシアは北海道への主権を有するという専門家もいる」と、我が国に対して脅迫じみた内容をSNSに投稿したほか、同14日には日本海において、キロ級潜水艦2隻から核弾頭も搭載可能な最新式の巡航ミサイル「カリブル」を発射して、我が国をけん制した。
カリブルの実力とはどの程度なのか?
ミサイル「カリブル」は、射程距離が2,000km以上あり、今回のウクライナ侵攻でも黒海などに展開する艦船や潜水艦から発射されている主力ミサイルである。軍事評論家の間では「ロシア版のトマホーク」と評される。
しかしながらウクライナとの戦いでの「実績」は思ったほど芳しくはないようだ。
米国防情報局（DIA）の関係者によると、「ロシアのミサイルの命中率は、40％にも達しない。更に巡航ミサイルについては、約10％がウクライナにより撃墜されている。」としている。
アメリカがウクライナへの供与を逡巡した末に見送った、射程距離300kmの戦術ミサイル、エイタクムスは勿論日本にも配備済であり、ロシア軍が核弾頭を搭載しない限り、大した脅威とはならない。また、ディーゼル型攻撃潜水艦のキロ級については、海上自衛隊の対潜能力からすれば比較的捕捉しやすい目標であり、隠密裏の活動は限定されるであろう。何しろ潜水艦とは敵に捕捉されたら「終わり」なのだ。
今回伊豆諸島を航行した、ロシア海軍はグリシャ�控蘊�型フリゲート艦で、最新のものであったとしても、平成6(1994)年に就役したものだ。現在28隻がロシアで就役中である。
射程12km程度の対空ミサイル（SAM）「キンジャール」を装備しているが、この程度では日米両軍が保有するほとんどの空対艦ミサイル（ASM）でスタンド・オフ（SAM射程圏外からの）攻撃が可能である。
これに対して、航空自衛隊の保有する対艦ミサイルの命中精度は極めて高いことが実射訓練などで実証されており、これによる攻撃を受ければ、ひとたまりもないだろう。航空優勢を確保しない限り、これらの艦艇は対艦ミサイルの標的となるだけだということだ。
ロシアは地続きの国以外の国と対峙するにはどうしても海軍の力が必要になる。太平洋艦隊の戦力は大義も正義も無い「特別軍事作戦」開始後はどの程度なのだろうか。
ロシア太平洋艦隊の旗艦であるミサイル巡洋艦「スラバ級（CG-011：11,000トン級）」は、昨年12月29日にウダロイ級駆逐艦と補給艦を伴って対馬海峡を東シナ海方面へ進出して以降、未だに帰港した形跡はない。ウクライナ侵攻に関連して欧州方面へ支援に向かった可能性が高い。
という事はロシアは威力偵察を頻りに行なってはいるものの、旧式艦の駆逐艦とフリゲート艦及び通常動力型攻撃潜水艦など、どんなに頑張っても戦闘可能な艦艇はせいぜい20隻が良いところではないだろうか。しかも旗艦を欠いた状態だ。ありったけの戦闘可能な艦艇を動員出来たとしても、この程度では海上自衛隊の1割強の戦力でしかない。
軽挙な妄動はロシアの思うつぼだと考えるべきだ。
■実際には過去に類を見ないほど閑散としているロシア軍の示威活動■
6月7日夜間、ロシア軍機と推定される4機がロシア沿海方面から真っすぐに北海道へ向けて飛来し、うち2機については本邦領空手前で反転して北海道西方で旋回飛行を行い、残りの2機については北上して樺太方面へ消え去ったことは記憶に新しい。
これは時間帯やヘディング（針路）など、その行動パターンから、ロシア空軍の戦闘機級による航空自衛隊千歳基地に対する威力偵察と推定されるものである。不意に急襲（高速で領空に接近）して相手の対応を確認するという目的の行動であり、一種の軍事的示威行動である。
今回の目的は、6月3日に行われた米空軍戦略爆撃機（B-1）2機による日本海などへの飛行（軍事プレゼンス）に、航空自衛隊千歳基地の戦闘機（F-15）4機がエスコート飛行（訓練）したことに対する「報復」の積りではないか。
勿論この「報復」は、この米空軍の戦略爆撃機による飛行をロシアが脅威と感じたことの裏返しと見て取る事も出来る。
しかしながら同時に、これが今ロシア空軍にできるわが国への精一杯の「報復」であったとも考えられる。
というのも、2月24日のロシアによるウクライナ侵攻以降、わが国に接近してきたロシア軍機は、今回のものを除き、5月24日に中国の爆撃機（H-6）4機と合同パトロールと称する示威行動を実施した、戦略爆撃機（Tu-95）2機とこの際偵察活動を実施した電子偵察機（IL-20）1機の3機のみという閑散ぶりだからである。
これは、近年のロシア軍機の活動においては異常に少ない。中国の爆撃機を入れてもたった9機だ。
比較のため、今ほど日ロ関係が険悪ではなかった、平成26(2014)年の場合、2014年2月24日〜6月10日の間、わが国周辺に飛来したロシア軍機は、戦略爆撃機(Tu-95)22機、対潜哨戒機（IL-38,Tu-145）12機、電子偵察機（IL-20）19機、早期警戒管制機（A-50）1機の延べ54機だった。
単純に比較すれば今回はこの8分の1（戦略爆撃機は10分の1）程度である。
なぜこのような事になっているのか。
1.ウクライナと対峙するため、主だった艦艇、航空機が欧州に配置転換されている。
2.稼働率が低い:これはソ連時代からそうだった。
3.燃料と部品の節約:最新機器や半導体はロシアでは製造が出来ないから。
という背景が挙げられるかもしれない。
これらから、虚勢を張ったプロパガンダに乗せられる事なく、ロシアには向き合うべきではないか。ロシアは今回領海侵犯はしていない。寧ろ領海侵犯を常態化させているチャイナに対し、大いに警戒すべきであろう。
(了)
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