米シンクタンクの戦略国際問題研究所(CSIS)が、11月に公表した報告書で、米軍普天間飛行場の辺野古移設について「完成する可能性は低いと思われる」と評価していたことが分かった。
報告書は、米海兵隊総司令官が打ち出した戦略見直し指針について論じたもので、元海兵隊大佐の経歴を持つ国際安全保障担当のマーク・カンシアン上級顧問が執筆した。
興味深いのはその中で、辺野古の新基地建設計画の完成を困難視している点だ。
本紙米国特約記者の取材に対し、「計画の行方は日本政府にかかっている」との原則論を明らかにする一方で、こう説明している。
「建設に伴う技術的困難、経費膨張、工期延長、地元の反対などで、最終的には日本政府が計画を中止、あるいは縮小するのではないか」
名護市辺野古の新基地建設に伴う軟弱地盤や活断層の存在を懸念する声は米議会にもある。
2021会計年度国防権限法案に付随する報告書の中に、当初の小委員会段階では、軟弱地盤対策に対する懸念が盛り込まれていた。
最終的に新基地建設を巡る文言は削除されたが、現状を冷静に見詰める専門家の目がワシントン周辺にも存在することを示すものだ。
このような報告書を過大に評価することはできないにしても、現状を正確に、タイミングを失することなくつぶさに伝えることによって、米世論を動かす。その可能性を模索すべきである。
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沖縄県知事や県議会関係者は、これまで何度もワシントンを訪ね、普天間返還や新基地建設の見直しを要請してきた。
だが、「基地を提供するのは日本政府。日本政府に要請してもらいたい」とまともに取り合ってもらえないこともしばしばだった。
だが、米国の有権者やロビー団体を介した要請には米議会の議員も耳を傾ける。議員は、日本政府による「辺野古唯一」キャンペーンとは異なる、別の現実に触れることになる。
軟弱地盤の改良工事のため新基地建設が大幅に遅れ、費用も膨れ上がることが明らかになり、先行きを懸念する声が議会やシンクタンクの中から出始めている。
「普天間飛行場の一日も早い危険性除去」が移設の目的であるはずなのに、この先10年以上も現状のまま、というのは、計画の破綻以外のなにものでもない。
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中国は日本を射程に収める弾道ミサイル開発を急速に進めており、沖縄の「地理的優位性」よりも「地理的脆弱(ぜいじゃく)性」のほうがクローズアップされつつある。
再来年は復帰50年の節目の年に当たる。沖縄への基地集中を見直す絶好の機会である。
玉城デニー知事は就任以来、政府に対話を呼びかけてきたが、政府の強硬姿勢は何一つ変わっていない。
復帰50年に向け沖縄の基地負担問題を焦点化するための大きな取り組みが必要だ。この機会を逃してはならない。
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