地上配備型迎撃システム「イージス・アショア」の配備計画停止の発表から一夜明けた16日、候補地の山口県で一貫して反対を訴えてきた阿武町の花田憲彦町長が中国新聞のインタビューに応じ「住民の力が阻止につながった」と語った。また、「イージスの交付金などもらわなくてもまちづくりはできる。財政は健全で若者の定住も進んでいる」と自信をみせた。
―計画停止をどう受け止めていますか。
前触れもなく突然だったので心底驚いた。計画の表明から2年。私は2018年9月、町議会とともに反対を表明した。防衛省にも撤回を直談判した。計画反対の住民団体には町民の約6割が会員となって固い意志を示した。怒濤(どとう)の勢いで反対を訴え続けた。
容認の住民も「国に反対できるはずはない。辺野古を見てみろ。それなら見返りを求める方がいい」との現実的な選択だった。
―連絡はどこから。
河野太郎防衛相から電話で「申し訳ない。迷惑を掛けた」との言葉をもらった。近く山口を訪れて謝罪したいと言っていた。ぜひ白紙撤回を望んでいる。
―首長が全員自民党の保守王国の山口で国策に反対して勝算はありましたか。
妻には「国策にあらがうことは5%の成功確率だ」とこぼすこともあった。実際は限りなくゼロに近い。奇跡が起きたような感覚だ。これは住民たちが最大限の努力をしたからこそアリの穴を大きくできた。将来の子どもたちに今のままのまちを継いでもらいたいという強い思いがあった。
―システム改修が必要なブースターの問題が計画停止の鍵となりました。
国は「ブースターを演習場内へ確実に落とせる」と説明していた。しかし後の説明会で住民の指摘を受けて「100%ではない」と言いよどんだ。最終的には「落とすように努力する」に変わった。ミサイル攻撃で国家が受ける損害に比べれば、ブースターが町に落ちる損害は小さいとの言葉まであった。住民を何だと思っているんだとはらわたが煮えくりかえる思いだ。
ただ、国を恨むつもりはない。国防には大義がある。ただ、私にも町長として住民の安心安全を守る大義がある。大義と大義のぶつかり合いだった。
―イージスはまちづくりを台無しにすると訴えていましたね。
まちづくりには障害でしかない。かつて萩市と合併せずに単独町制を選んだ時には「10年後にまちはなくなる」とまで言われた。だが、この10年で人口は減るどろか、わずかだが社会増に転じた。イージスの金なんかに頼らなくていい。
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