ドゥーチュィムニー「［大弦小弦］ある在沖米総領事がワシントンへ異動した時のこと…」

　ある在沖米総領事がワシントンへ異動した時のこと。同じく現地へ赴く旧知の在京メディア記者が「紹介してほしい」と頼んできた

▼英語力に難があり、日本語を自在に操る総領事は取材先として貴重だと言う。これから超大国の首都で仕事するのに、心もとない語学力で大丈夫なのかと、人ごとながら心配したのを覚えている

▼人口約70万人のこぢんまりとしたワシントンの街には濃縮された権力と人々が渦巻く。発せられる情報は世界を駆け巡り、日本の政策判断を左右する。それがメディアが生んだ「神話」だとしたら、どうだろう

▼日本政府や大企業の資金が流れ、気脈を通じる知日派の意見が「米国の声」として日本に届く。伝える役目を担うメディア。18日のJCJ賞贈賞式で講演した新外交イニシアティブの猿田佐世代表は「日本の大手メディアによって神話が現実化している」と語る

▼現地駐在の日本人記者約60人のうち英語が十分堪能なのは10人程度とも。つたない語学力が取材範囲を狭め、特定の知日派に偏る一因と指摘した。「辺野古が唯一」の声にあらがう沖縄からすると、あぜんとするほかない

▼「神話」が付いた常識はいくつも崩れ去った。バブル期の土地神話、原発の安全神話。沖縄で信頼を失った「基地神話」は、知日派の取り巻きだけで生きている。（西江昭吾）