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2018年11月20日22:54

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ドゥーチュィムニー「沖縄県知事選の前哨戦、「名護市議選」が決める沖縄の将来」

 9月30日に投開票が行われることになった沖縄県知事選は、辺野古基地の建設を止めたい「オール沖縄」にとっても、辺野古基地の建設を進めたい自民・公明党にとっても「絶対に負けられない戦い」です。サッカーの試合だったら、負けたところで監督が悪口を言われて終わりますが、「選挙」というのは人々の暮らしに直接的な影響を及ぼすので、時には人が生きていけなくなります。


 もし、シングルマザーでギリギリの生活をしている人たちに「消費税10%」が導入されたらどうなるか。その先、もっと消費税を上げるべきだという声もあるので「消費税 20%」になったらどうなってしまうのか。「選挙」というのは、そういうことを大きく左右するものなのです。

 今回の沖縄県知事選は、普天間基地をそのままに、名護市周辺で暮らす人たちの頭の上をオスプレイや戦闘機が飛び交い、沖縄の東海岸に軍艦が並ぶ光景を作り出すかどうかを問う選挙になっています。と言っても、ぶっちゃけた話、東京で暮らしている私たちの生活には何の変化もありません。沖縄なんて人生で何度か旅行で行くか行かないかぐらいなもので、辺野古基地ができてオスプレイが頻繁に飛び交うようになったところで、美ら海水族館に行く時にオスプレイがやたら低く飛んでうるさいこと、美しい夕日を見ながら海岸でキスしようと思った時に水平線の手前に軍艦が並んでいるぐらいしか影響がありません。

 オスプレイはこれまでに何度も墜落事故を起こしており、民家のすぐ近くに落ちたこともありますが、どうせ死ぬのは僕じゃありません。最悪、かわいこちゃんや子どもが死んじゃうことがあるかもしれませんが、その時はその時で運が悪かったということで。だから多くの皆さんが選挙に興味を持たないわけですが、沖縄に家族や恋人が住んでいる人もいるかもしれません。少しでも興味を持ってくださった方のために、このたびの沖縄の選挙の現状を伝えたいと思います。

◆9月9日の名護市議選が持つ意味

 サッカーの試合には「この試合で勝てば次の試合で負けても決勝トーナメント進出」みたいな話がありますが、実は、「選挙」という「絶対に負けられない戦い」にも同じような話があります。

 多くの人が9月30日の沖縄県知事選ですべてが決まるように思っているかもしれませんが、本当の戦いは9月9日の名護市議選にあります。名護市では今年2月に市長選が行われ、辺野古基地反対派だった現職の稲嶺進さんが敗れ、辺野古基地推進派の渡具知武豊さんが市長になりました。しかし、名護市議会はまだ「基地反対派」が多数を占めているため、基地建設を進めようとしている渡具知武豊さんの提案は議会で否決される構図になっています。

 せっかくの提案を否決されるのはムカつくので、渡具知武豊さんもまた、議会が提案してきたことに市長が持つ「否決権」を行使して対抗する泥沼を展開しているのですが、こんなことではなかなか辺野古基地の建設が進まないので、9月9日の名護市議選では基地賛成派が過半数を占められるように、まさに今、積極的にアピールしているところです。それまでの名護市は市長も議会も「辺野古基地新設には反対」というスタンスだったため、実は、現場レベルでかなりの項目がストップしていましたが、もし名護市議選で議会の過半数が「基地推進派」に変われば、市長も議会も「基地賛成」になりますので、現場レベルでどんどん建設工事が進むことになります。

 この日も辺野古の基地建設予定地の前では大規模な抗議活動が行われていましたが、基地推進派が議会で過半数を占めれば、当然のことながら、こうした人々の声も虚しく、あっさりと基地の建設は進められることになります。どれだけ大きな声で抗議をしても、どれだけ大きな横断幕を掲げても、どれだけ泣きながら訴えても、みんなが選挙で基地建設推進派の候補に投票してしまえば工事は進む。ここに集まっている皆さんでさえ忘れがちな話なのですが、すべては「選挙」で決まるのです。TPPにしろ、カジノにしろ、高度プロフェッショナル制度にしろ、自民党や公明党がやりたい放題を極めているのは「選挙に勝ったから」なのです。

 日頃から自民党や公明党を応援している皆さんは、どこかで何かを訴えるのではなく、そんな暇があったら選挙活動をしているわけです。公明党をご覧ください。熱心な創価学会の信者の皆さんが、今日も誰かに「あの人をよろしく!」と電話をかけているのです。時には知り合いのお店を訪れ、商品を買いながら「9月9日はよろしく!」と言っているのです。基地の前で抗議することが無駄だと言いたいわけではありません。基地の前で抗議することもそれはそれで民主主義の上では大切なことなのですが、もう少し「選挙」のことを考えないと、皆さんの声は届かないのです。

 辺野古基地の建設を進めようと思ったら、9月30日の沖縄県知事選に勝てなかったとしても、9月9日の名護市議選で過半数を取ってしまえば、現場レベルで工事は進み、建設現場の前で抗議している人たちを排除することができるようになります。逆に、辺野古基地の建設を止めようと思ったら、9月9日の名護市議選で基地反対派が過半数を取った上で、9月30日の沖縄県知事選で勝つ必要があります。もう既に市長は辺野古基地賛成派になっているので、1つでも落とせば基地の建設は進みます。サッカーだったら、さぞかし緊張感のある試合になっていることでしょう。

◆争点を反らすため延期された土砂投入

 当初の計画では8月17日に土砂が投入される予定になっていましたが、承認撤回を表明した翁長雄志知事が急逝したことを受け、計画通りに土砂を投入したら世論が思わぬ方向に動いてしまう可能性があるため、土砂の投入は事実上、9月30日の沖縄県知事選の後に延期されました。どうせ9月30日に宜野湾市長で日本会議に所属している佐喜眞淳さんが勝てば、好きなだけ土砂を投入できるのです。こんなタイミングで慌てて土砂を入れる必要がありません。

 土砂の投入は延期されましたが、工事そのものが延期されているわけではありません。そこらへんの家電量販店で買ってきたショボいデジカメの60倍デジタルズームで、この日も現場では工事が進められていることを確認しました。基地の前では抗議者たちが「止めてやったどー!」と右手を挙げていたのですが、確かに土砂の投入こそ止まったものの、工事そのものは夏休みもなくゴリゴリに進められ、今日も埋め立てる海の面積を広げようとしていたのです。

 辺野古基地の建設予定地は、実際に行ってみると、めちゃくちゃ広いです。あの広大な敷地に土砂を投入し、その上に麻生太郎財務大臣のご実家の会社である「麻生セメント」のセメントが大量に流し込まれる計画になっているわけですが、とっても広い海の上に基地を作るのですから、そのセメントの量は莫大です。そこらへんのビルを工事したところで、これほどセメントを使うことはないでしょうから、この辺野古基地がどれだけの利権を生んでいるかが分かるかと思います。

 そして、基地を作ると地元の土建屋が儲かるように言われていますが、麻生セメントは福岡県福岡市の会社です。地元の土建屋がまったく儲からないとは言いませんが、下請けの下請けの下請けとしてギリギリの値段で発注されているので、今のご時世、幾重にも下請けになっているような会社がウハウハになるほど儲かるはずはなく、沖縄の最低賃金が低いこともあって「どうせ他の仕事をしていたら、もっとお金をもらえていないのだから、これくらいの金額でも満足だろ?」と言わんばかりに、ずいぶんとダンピングされた値段を提示されることになります。

 まるで辺野古基地があれば地元の経済が潤うかのように言われていますが、もっと現実を見たほうがいいのです。

 本当は基地経済に頼るよりも観光経済にシフトしたほうが圧倒的に儲かってしまう現実。なにしろ、観光経済の場合には観光客から直接的に沖縄の企業にお金が支払われるわけで、本土から搾取する人間が少ないのです。しかし、基地より観光の方が沖縄の経済が回るなんてことがバレたら、本土の企業がウマウマできなくなります。これはいけません。沖縄の皆さんにはいつまでも低賃金で頑張って働いていただき、企業の利益に貢献していただかなければならないのです。

 だから、大きな声で言ってやらないといけないのです。「あの人たちはプロ市民なので、あんな危険な思想の人たちの言うことを聞いてはいけませんよ!」と。こう言えば、自民党ネットサポーターズに加入しているようなネトウヨが盛り上がり、ネットから世論が作られます。観光よりも大きな基地を作った方が儲かる気がする。こうして今日も地球はうまく回っているのです。

◆保育園や子どもの医療費を「再編交付金」で支払う愚策

 渡具知武豊さんは今年2月の名護市長選で「子どもの給食費を無償化する」という公約を掲げ、名護市議に当選しました。稲嶺進さんが「子どもの給食費の無償化を目指して基金を作る」としていたのに対し、即効性を強調していたことが名護市民に評価されたのです。

 実際、渡具知武豊さんは公約を果たすために子どもの給食費を無償化するために動いており、中央政府に「再編交付金を前倒しで出して欲しい」と陳情に行きました。「再編交付金」とは、基地を作るにあたって、政府から渡される「ご褒美マネー」のこと。さらに、渡具知武豊市長は優秀な人間を派遣してほしいと政府にお願いして、内閣府から32歳の男性が派遣されました。いまや議会における答弁は渡具知武豊市長ではなく、ほとんどを内閣府の32歳エリート官僚が答えるようになっています。つまり、地域振興策をどのように進めるのかを考えるのが市長ではなく、内閣府から派遣されてきた男なので、すべてが政府の意向に沿う形になるのです。

 地元のアイディアを捨て、政府の言いなりになる街づくり。これも名護市民が「選挙で決めたこと」なので、ある意味では「民意」なのですが、結果として名護市民が苦しむ日が来ても、その時はその時です。

 ただ、名護市にはこれに抵抗しようというベテラン議員も存在しています。沖縄の貧困率は非常に高いので、確かに給食が無料になるのはありがたい話なのですが、名護市議を40年も続け、辺野古基地問題がここまでこじれる遥か前から議員をしている大ベテランの大城ヨシタミさんは、「子どもの給食費を再編交付金に頼るなんてとんでもない」と反対しています。

 その理由は単なる感情論ではありません。

 再編交付金は基地建設中にしか支払われないお金であり、政権が変われば続くかどうかも分からないような不安定なお金です。このお金に頼って子どもたちを食べさせるようになれば、今まで以上に基地に依存しなければならないし、基地が完成した後、名護市は子どもたちをどうやって食べさせていけばいいのか。今が良ければそれで良いという考え方をするのではなく、しっかりと自立した経済を持たなければ、今よりずっと経済が悪くなって、本当に子どもたちを食べさせなければならない時代がやって来た時に、子どもたちを食べさせることができなくなってしまうというわけです。

 大城ヨシタミさんをはじめ、かつての稲嶺進さんと歩調を合わせて辺野古基地の建設に反対してきた議員たちは、名護市議会では渡具知武豊さんの提案にあらゆる反対の手を尽くしていますが、渡具知武豊さんもあらゆる手を尽くして基地交付金を活用する「渡具知流」を進めようとしています。

◆統一地方選候補者、基地「反対」は「賛成」の約2倍

 琉球新報の調査では、統一地方選に立候補する予定の29市町村の候補者たちにアンケートをして、416人から得た回答によると、辺野古基地に「反対」を表明している人は200人で48.1%、「賛成」だと言っているのは110人で26.4%でした。

 ネトウヨの皆さんは、まるで辺野古基地賛成派が多数を占めているかのような口ぶりで発言していますが、実際に現地で議員の話を聞けば、辺野古基地の建設に賛成している人に会うより、反対している人に会う確率のほうが高いというわけです。

 基地を作り、空にはヘリコプター、海には軍艦が浮かぶような光景が当たり前になれば、観光経済にもダメージを与えることは避けられません。しかし、経済を最重要視しているはずの自民党や日本維新の会の候補ほど、基地を作ることの経済的なデメリットを無視して偉そうに語るので、沖縄県民はその矛盾点をもっと積極的に質問した方がいいと思います。おそらく、まともには答えられる人はただの1人もいないことでしょう。

 9月30日の沖縄県知事選ばかりが注目されますが、9月9日の統一地方選は地味に見逃せません。9月9日は普天間基地のある宜野湾市議選、辺野古基地のある名護市議選があり、南城市、沖縄市、石垣市でも選挙があります。沖縄県知事選の「前哨戦」のような位置付けで語られることもありますが、本当の戦いは「沖縄統一地方選」だと思います。

 筆者は9月2日から選挙期間中、ずっと沖縄に滞在して13自治体の選挙を見てくる予定です。調子がよければ2自治体ぐらい増やすかもしれませんので、ぜひご注目ください。

<取材・文/選挙ウォッチャーちだい(Twitter ID:@chidaisan)>

ちだい●選挙ウォッチャーとして日本中の選挙を追いかけ、取材活動を行う。選挙ごとに「どんな選挙だったのか」を振り返るとともに、そこで得た選挙戦略のノウハウなどをTwitterやnote「チダイズム」を中心に公開中。立候補する方、当選させたい議員がいる方は、すべてのレポートが必見。
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