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2015年11月24日21:32

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ドゥーチュィムニー「中国軍事パレードの主たる狙いは「抗日」ではない」

 8月22日深夜から23日にかけて、さらに24日にも、北京の天安門前の長安街で、9月3日に挙行される「中国人民抗日戦争及び世界反ファシスト戦争勝利70周年記念軍事パレード」の予行演習が行われた。

 日本では、22日深夜の予行演習が「厳戒態勢下で」行われたと報じられたが、中国で報じられた記事からは、24日の予行演習に多くの市民が見学に詰めかけた様子が伺える。民衆に比較的人気のある軍事パレードに、今年は、特別な意味が込められている。

この軍事パレードは、社会の安定化を図る絶好の機会だ、という中国人研究者もいる。中国国内では、習近平主席が展開する反腐敗や改革によって中国社会が不安定化している、と自認されているのだ。

 戦勝70周年を記念する軍事パレードに、不安定化した社会を一つにする効果が期待されているのはなぜだろうか。そこには、中国指導部が、軍事パレードに込める意味が関係している。

第2次大戦の戦勝国として認められたい

 中国が、単に「抗日戦争勝利70周年記念」と呼ばず、「世界反ファシスト戦争勝利」を加えているのは、中国が第2次世界大戦の勝者であることを誇示したいからだ。中国は、連合国の一員として、世界と協力してファシストを倒した、と言いたいのである。

そして、重要なのは、ここからだ。中国は、勝者として、本来、国際規範を作る側にいるはずだったが、国力の低さゆえに、欧米に好き勝手に国際規範を作られてしまった。「国際社会は、不公平と不平等が突出している」という外交部などの発言に、こうした意識が表れている。これは、「これから中国の番なのだ」という意識の裏返しでもある。

 具体的に、中国がどのように国際規範を、「中国にとって公平」なものとしていきたいのかは、中国が自ら答えを示している。米中「新型大国関係」である。米中両大国が、国際社会のルールを決めていくというのだ。

 軍事パレードは、「中国には今やその能力がある」ことを示す機会でもあるのだ。そのために、パレードでは、その能力を効果的に示す新型兵器がお披露目されるのである。その能力とは、「米国と対等な能力」という意味だ。

アメリカに劣らない新型兵器を披露

 中国の報道では、J-15戦闘機、J-20戦闘機、H-6K爆撃機、KJ-500空中警戒管制機、Il-78空中給油機、高新-6号対潜哨戒機、Y-20大型輸送機といった航空機の名前が挙げられている。

 いずれも新型航空機であるが、米国を意識した陣容でもある。J-15戦闘機は、空母艦載機だ。J-20は、中国が、米国のF-22に匹敵するとするステルス戦闘機である。H-6Kは、約3500キロメートルの作戦半径を持ち、搭載できる長剣-10巡航ミサイルの射程と合わせて、グアム島の米軍基地を制圧できると豪語する。KJ-500は、南シナ海等、中国周辺で活動する米軍機を監視できる。Il-78は、戦闘機の滞空時間を延ばすために不可欠だ。

 しかし、航空機は、ヘリコプターを除いて、通過速度が速い。各国首脳を始めとする観客に印象深いのは、目の前をゆっくり移動する地上の大型兵器である。特に、米国と対等な立場を誇示したい中国が見せたいのは、大陸間弾道ミサイルだろう。核抑止こそ、米国との対等な力を示すものだからだ。

 米国本土を攻撃できる大陸間弾道弾では、これまでもTEL(Transporter Erector Launcher、輸送起立発射機)に搭載されたDF-31が軍事パレードに参加している。そして、中国は今、新しい大陸間弾道弾の試験を繰り返している。DF-41だ。この新しいミサイルがパレードに参加する可能性もある。

各国の参加、日本で言われるほど冷遇はされていない

 しかし、それよりも中国が演出したいのは、各国が参加する「国際観閲式」かもしれない。各国軍にパレードへの参加を呼びかけるのはそのためだ。ファシストに対する勝利を世界が祝う祭典である。中国は、その祭典を主催し、戦勝国の中でも主導的な地位を見せることが出来る。中国の言う、「国際社会における地位の調整 (この場合、「向上」の意味に近い)」である。

 日本では、日米を含む多くの西側諸国が、首脳級の出席を見送ったことが話題になっているが、中国外交部副部長は、8月25日、49カ国の元首、政府首脳、高官が軍事パレードに出席すると発表した。同日付の環球網は、中国が9月3日に行う抗日戦勝記念の軍事パレードに招待した51カ国のうち、日本とフィリピンだけが招待に応じなかったと報じている。

 欧米諸国の元首と首脳は出席しないが、フランスとイタリアの外相は自国政府代表として出席するとし、欧州連合(EU)加盟国としてはチェコのゼマン大統領が、また、オランダとオーストラリアも閣僚級の政府代表が出席すると報じた。アメリカの参加については、カナダ、ドイツ、EU等とともに、駐中国使節団(大使館員)を以て政府代表とするだろうという報道があった。

 西側の首脳級が参加しないことには、もちろん中国は不満だろう。それでも「『外交戦』という形で出席者の肩書きを求めない」と言うのは言い訳がましいが、日本で考えられているほど、国際社会が中国を冷遇した訳でもない。中国としては、首脳でなくとも、元首脳や代表団の参加があれば、その国名を挙げることが出来る。世界の式典であると誇示できるのである。

 中国が、国民と国際社会に見せたいのは、国際社会を主導する正当な権利とその能力を有する中国の姿なのだ。

[執筆者]

小原凡司

1963年生まれ。85年防衛大学校卒業、98年筑波大学大学院修士課程修了。駐中国防衛駐在官(海軍武官)、防衛省海上幕僚監部情報班長、海上自衛隊第21航空隊司令などを歴任。東京財団研究員


小原凡司(東京財団研究員)
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