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2020年01月23日13:32

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なんというか暖冬ですね(´∀`)

一年に一作が私にはちょうどいいみたい。
お久しぶりです。吉兆夢です。
新しい詩が出来ました!よろしければ読んでやってください。しましんさんに長っ!とまた言われてしまいましたが私の目指すところはたぶんお経とか呪文とかなのでまだまだ精進します( ´∀`)




 【夜明かしカルテット】


どうしようもなさが吹き荒れて待ち明かすだけの夜は
暖炉に薪を焚べるたびに
とっておきのひみつを、ひとつ

"校舎の横のおんぼろ小屋には貂(てん)の親子が住み着いてる"
"花屋さんの花梨ジャムは喉の痛みにいちばん効くの"

しんしんと降り積んでいく
たわいない筆談
ゆらゆら揺れる煉瓦の目地(めじ) は
水の底の網のよう

"これはひいお祖父さんが冬の夕日をこっそり鋳って作った鍋"
"鍋で煮ているのは紅い花豆、あたしの一番好きなもの"

"霜をまとったあのミモザの銀の櫛歯を弾いてごらん
ミードを片手に踊り騒ぐ宵っ張りの小人を呼ぶわ
(キリン、キリン、と澄んだ音色は
ぬいぐるみを泣いて探すあなたの声にそっくりね)"

ふくれっつらの娘の頬で冷えた両手を温めながら
私は故郷の雪を思う
雪の、音、を思い出す
まだ氷のない湖に降りかかっては溶けていく
初めて愛しい人に触れたときの
摩擦にも似た
あの音を


   星1



ほおかむりをする木々の投影 をこのうえなくゆっくりと 刺し殺す 咽セ躊躇ギ退ル(すざる)網代木を
等分(トブン) する なわ のゆいめをたよりにふかく ふかく ゆれている 
しかいのおくまで れつをなすあじろぎ もぐらぐら と かげろうに ゆれて そこはまだ もえている から ふかく ふかく くいを うつ



  星1



文字盤を掲げた空っぽの巣が
かっこうの不在を告げている
はじめて
パンを焼く娘の
ぱちぱちと瞬く薪(たきぎ)の街角に放してやってしまったから
森にかえるまではすこし
時間がかかるかもね
。巣穴からは
毛糸がいっぽん床まで垂れて
深緑色のラグを這い
揺り椅子の下でこんがらがった玉になる
私はキリンを編んでいる
つもりがけっきょく黄色いロバを編んでしまう
それでも娘は上機嫌で
煮立った鍋を覗き込み
焼きすぎてしまったパンの上面をバターナイフでザリザリ削った

 "焦げたパンでマッチが擦れる"
 "火がつくかもね"
 "バターも燃えそう"
 "それじゃあますます焦げてしまうわ"

そうしてなにもかもを灰にしてしまったこの炉に
マッチの燃えさしを埋めていった
湖底に杭を打ちこむように
容易に揺らがないように
それはいまでもくすぶったまま
どうしようもなく風のなく夜は薪(まき)はおろか灰すらも
なにもかもをなかったことにしようとしてしまうから
どうしようともせず花豆を煮る
あなたのためにロバを編む
ぐらぐら煮立つ銅鍋の
のびたりちぢんだりする水面の輪っかをすくい閉じるようにして

"キリンの茶色い斑点を拝借したのはこのパンです"
"焚き火の跡にはところにより甘い雪が降るでしょう"



   星1



いつもの森を歩いていた
風のやんだ山道は
しん、と凍りついていて
捩くれてしまった気管支を
ポキリ、と手折り
踏みしだく
うすくジャムを塗りつけたような
来し方には夕日(せきじつ)が
峡谷につっかえて
もう帰還しない
かっこうの
(こえ)

火葬する

、ほろほろとくずれてしまったあの粉雪もきっと
巣をかたどるようにやさしく
すくえば
  よかったね
  (いいかもね)
いつだって
すなおに差しだされるあなたの
(やわらかい)
手のひらに黄色い
(、おきて)
生まれたての
(かあさん)
ロバが鳴いて
(かあさん、ねぇ)
ロバの親子は
(もう)
新しい巣のなかで
(花豆は煮えてしまったよ)

…ほころぶように開いた手から編み針がそっと取り上げられると
もつれてしまった毛糸玉の、舫はするするほどけてしまって舟は
もう岸からとおくみずうみのふかいみどりのみおにしずめたまま
のいくつかの 'くい' 、いつかたしかに 'くい' だったものまでみな
そこにゆれるやさしいとおさにいまならこえを、おもいだしても
あたらしいすをゆすりあげて、ないでゆくこのみなもに

    キリン、
           
        キリン

 あぁ、ほら よあけのゆきがまいおちてくる







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