歯無しの話

　僕には喋るときや、笑うときに、手で口を隠す癖がある。

　以前、飲み屋で喧嘩をして、油断をしたときに二人相手にボコボコにやられて前歯をヘシ折られたのが原因だが、我ながら馬鹿をしたと思う。
　そのときに前歯の下側をを四本、上の歯を一本を無くしてしまった。
　家に帰って鏡で見ると、将棋の加藤一二三先生みたいになっている。
　すぐに歯医者に行こうと思ったが、そう云えば、セラミックの歯は一本十万円掛かったなあ、と考え直し、結局今日に至るまでそのままにしている。
　歯がなくて困るのは、食事がなかなか上手く摂れないのと、見た目が良くないので、相手に失礼になるという点だ。
　噛むのは奥歯だけなので、とんかつとか、天丼とか非常に難儀する。だって、小さく噛み切れないんだもん。
　
　そんなこんなで今日も街をリハビリ散歩ででのろのろ歩いている。
　それから、もう喧嘩はやめような。