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2017年11月02日16:14

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解放後のモスルに渦巻くISIS協力者狩り

解放後のモスルに渦巻くISIS協力者狩り

ニューズウィーク日本版 / 2017年10月30日 11時30分

<仮設刑務所には「容疑者」があふれ、女性や子供までもが復讐の標的に...かつてのISIS最大の拠点に残る深すぎる禍根>

テロ組織ISIS(自称イスラム国)がイラク最後の拠点モスルから撤退した数日後、同市ニネベの裁判所を2人の女が訪れた。ISISに協力した「容疑者」を引き渡しに来たのだ。

といっても、連れて来たのは筋金入りの戦闘員ではなく、3歳にもならない彼女らの子供だった。「この子たちは要らない」と女たちは言った。「この子たちの父親はISISで、私たちをレイプした」

泣きじゃくる子供を置いて女たちは立ち去った。家族に責められて仕方なく手放したのではないかと、居合わせたイラクの人権活動家サイード・クライシ(身の安全のため本人の希望により仮名)は言う。「ひどい状況だ。自分の意思だとしても生易しい決断じゃない」

イラク軍がモスルからISISを一掃して3カ月、市民はISISへの復讐に燃えている。ISIS協力者の家族と絶縁したり、隣人をISIS絡みの犯罪で告発する人が後を絶たない。自警団を結成して自ら裁きを下す者もいる。春先にはチグリス川下流に多数の遺体が浮いているのが何度も見つかった。遺体の多くは目隠しされて縛られており、ISISに協力した容疑で政府側の部隊に処刑されたようだ。

市民が憤るのも無理はない。14年6月にモスルを制圧したISISは、住民約100万人に禁煙や男女の分離など厳格な法律を押し付けた。市民を拷問・処刑し、住宅を占拠し、片っ端から略奪した。子供を兵士に仕立て上げ、女性を奴隷にした。昨年10月に米主導の掃討作戦が始まると、ISISはスパイ容疑者や逃げ出そうとした市民を処刑。7月の撤退までに、イラク治安部隊の兵士8000人以上を殺傷した。

「ISIS協力者」とその家族がひどい扱いを受けても、ほとんどの市民は意に介さないようだ。弁護士は社会的排斥や報復を恐れて、弁護を引き受けたがらない。国際人権擁護団体ヒューマン・ライツ・ウォッチによれば、最近そうした容疑者を弁護する弁護士十数人に、ISISに協力した容疑で逮捕状が出たことが弁護士たちの不安に輪を掛けているという。

被告のために立ち上がることをいとわないのは、ひと握りの人権活動家くらいだ。その1人がスコット・ポートマン。現地でイラク人弁護士やソーシャルワーカーを雇っている米NPO、ハートランド・アライアンス・インターナショナルの中東・北アフリカ担当責任者だ。

ポートマンによれば、報復は今に始まったことではない。15年、イラク主導の連合軍はISISに対して攻勢を強めていた。ティクリートやラマディ、ファルージャなどの住民は、政府軍や武装組織が10代の若者や子供を含む「容疑者」を処刑・虐待していると報告した。



正当な法手続きが難しく

最近の攻防で虐待の規模が拡大しており、ISIS協力者への怒りはイラク戦争下の最悪の時期に匹敵すると、ポートマンは指摘する。イラク治安部隊はISISに協力した可能性のある人間(未成年者も含む)を悪臭漂う仮設刑務所に押し込み、ISISメンバーの妻子を収容所に送っている。7月の国連報告書によれば、ある収容所の環境は「人道的な基準以下」で、8日間に10人が死亡した。

その後イラク当局は、「報復から守るため」にISIS協力者の妻子1400人以上を逮捕した。「大勢の友人を失えば、復讐を願わずにはいられない」と、ポートマンは言う。

その感情が正当な法手続きを難しくしている。いい弁護士が付いても、裁判所の職員が不慣れだったり、裁判の多さに対応しきれなかったり、復讐に燃えていたりする恐れがある。

ハートランドに代わって裁判官や検察官向けのワークショップを運営する人権活動家のクライシの話では、若い戦闘員や無理やり仲間にされた人々に同情的な声もある。その一方で、指揮官でも12歳の新兵でもISISには違いないから「焼き殺せ」という声も聞くという。

あふれ返る拘束者が状況をさらに厄介にしている。クライシによれば、クルド自治区とイラク当局はISISと関係のある子供約5000人を拘束。裁判待ちの列は伸びる一方で、場合によっては審理開始まで数カ月かかり、ようやく始まっても短期結審になりがちだ。ヒューマン・ライツ・ウォッチによれば、空き家を利用したニネベのテロ対策法廷は7月上旬、約2000件を審理。裁判官12人で1日40〜50件を審理していたという。

ある都市で逮捕された容疑者が釈放後に別の都市で再び逮捕される例もあり、人権擁護団体は状況改善に努めている。心理学者やソーシャルワーカーは離散家族の再会や孤児対策、虐待の調査報告に取り組んでいる。ハートランドなどの法務チームは裁判官や検察官や弁護士に、訴訟ごとに状況を慎重に検討するようアドバイスしている。

「彼らは本当に過激派で犯罪者なのか。それともISISに強制されて行動を共にしていただけなのか」と、クライシは問い掛ける。「彼らは幼い犠牲者なのか、それとも殺人者なのか」

虐待や不当な有罪判決が深刻な事態を招く可能性もある。女性や子供を村八分にすれば、過激派の勧誘の標的になりかねず、未成年者を筋金入りのジハーディスト(聖戦士)と一緒に収監するのは新世代の殺人者を生み出すようなものだという。

「司法関係者に理解させなくては」と、クライシは言う。「法の支配は全ての人間に行き渡る。被害者にも、犯罪者にもだ」


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[2017.10.31号掲載]
エミリー・フェルドマン



確かにISは憎むべき相手ではあるだろうけど、自分の子供がIAり兵士に
レイプされ生まれた子供だとしても、母親としての愛情は持てないのか・・・・・
ま〜無理はないといえば無理はないが、幼い子供の顔を見ても、なきじゃくる幼い子供たちのおかうさんを呼ぶ声を聞いても、無理なものなのか。。。。。。哀しいな。
レイプなどされ一生の傷を心に負った女性も哀れなら、何より、そんな無責任な大人に翻弄される子供たちが哀れで仕方がない。
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