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2020年02月24日00:07

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「治療を続けるなら、辞めてほしい」と会社が…「不妊退職」の経済的損失は1345億円!?

「治療を続けるなら、辞めてほしい」と会社が…「不妊退職」の経済的損失は1345億円!?
2/23(日) 12:11配信読売新聞(ヨミドクター)


いつか赤ちゃんに会いたいあなたへ
 メーカー勤務のKさん(37)は、今、大きな壁に突き当たっています。

 「これ以上は不妊治療を続けることも困難で、しかも、仕事か治療か、どちらかを選ばなくてはならない。どうしたらいいかわからない」という、不妊治療を経験した人なら、多かれ少なかれ抱えたことがある悩みです。

「治療を続けるなら、辞めてほしい」と会社が…「不妊退職」の経済的損失は1345億円!?
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夫の病気と不妊の治療で貯金ゼロ
 Kさんが不妊治療を始めたのは29歳の時。まだ結婚1年目でしたが、周囲の友人や会社の同僚が次々に妊娠、出産をしていく中で、自分たちだけがなかなかできなかったので、気持ちがあせってきたそうです。検査は受けた方がいいかと思って病院に行き、そのまま治療に進みました。しかし、タイミング法から人工授精へと進もうとした矢先に夫に病気が見つかったため、不妊治療は中断して、そちらの治療に専念。幸い無事に完治して、不妊治療を再開することができたものの、その時には35歳になっていたといいます。

 「もう5年もたっていたので、すぐに体外受精から始めたのですが、なぜだか、全然妊娠できなくて……。かすりもしないんです。主人の治療の影響はないだろう、とは言われているんですが……。今回の治療で、もう助成金を使い切ってしまうし、主人の治療と体外受精で貯金はほぼゼロだから、もし今回の治療がだめだったら、次の治療はボーナスまで待たないとできない。だから、この(治療)周期にかけていたんです」と、声を落とします。

「治療を続けるなら、辞めてほしい」と会社が追い打ち
 そんなさなか、さらにKさんに追い打ちをかけるような出来事が起こりました。

 上司から「これ以上、不妊治療を続けるなら、周囲に迷惑なので辞めてほしい」と言われたというのです。私は驚いて「ええっ?」と思わず声を上げてしまいました。

 ハラスメント法がこれだけ注目されている昨今、いまだ不妊治療に対してはこうした「プレ・マタニティハラスメント」が見受けられるのは、本当に残念なことです。Fineでは長年、このプレ・マタニティハラスメントに対する取り組みも行い、今年6月に施行されるハラスメント法には「不妊治療に対するハラスメント」も明記されることとなりました。しかし、まだまだ、これについては知られていないのが現状で、このように不妊治療を理由として、あろうことか退職勧告をされてしまう女性がいまだに存在してしまうことは、もう残念を通り越して無念でなりません。

 Kさんにハラスメント法のことをお伝えすると、「社外の窓口に相談してみます」とのことでしたが、その声には力がなく、「貯金は底をついてしまったから、今度で最後かもしれなくて……。頑張ろうと思っていたのに、このまま治療を続けると、会社をクビになるかもしれないし……。でも、会社をやめて治療したって、また妊娠できないかもしれないし……。私は妊娠もできない…。もう何をどうしたらいいか……」と、とうとう抑えられず、涙が止まらなくなってしまいました。

 パートナーの病気の治療もあり、それが治って、やっと不妊治療ができるようになったと思ったのに、それもうまくいかず、体外受精に何度チャレンジしてもすべて陰性。それだけでも、どれだけつらいことでしょう。そのうえ今度は、これまでずっと頑張ってきた仕事を失うかもしれない、という不安まで出てきてしまったのです。そのショックはいかばかりかと思います。仕事と治療とご主人のケアと、これまでどれだけ頑張ってこられたのだろうとKさんの気持ちを思うと、かける言葉がなく、胸が詰まるばかりでした

仕事と両立困難 自ら「不妊退職」選ぶケースも多い
 こうした「不妊退職」を勧告されることは、もちろんハラスメントにあたります。しかし、「不妊退職」は、実は自ら退職を選んでいる(選ばざるを得なくなっている)ケースも多いのです。厚生労働省の2017年の調査では、仕事をしながら不妊治療をしている女性の約4人に1人(23%)が、両立できずに「退職」している、という結果が出ていますし、NPO法人Fineの5526人を対象とした「仕事と不妊治療の両立に関するアンケートPart2」の結果でも、20%の女性が、仕事と不妊治療を両立させられず、40%が働き方を変え、そのうち半数が「退職」したという結果が出ました。つまり、5人に1人が「不妊退職」をしていた、ということです。

 では、そもそも「不妊治療をしている人」は、どれぐらいいるかというと、国立社会保障・人口問題研究所「第15回出生動向基本調査」(2015年6月)によると、カップルの5.5組に1組が「実際に不妊治療を経験している」という結果が出ています。まだ治療をしていないとしても「不妊に悩んだことがある」のは、実に3組に1組です。不妊当事者は、それを公言しないケースが多いことから、サイレント・マジョリティともいわれています。不妊は今や、「すぐ身近にある重要課題」なのです。

 国や企業にぜひ考えていただきたいのは、この「不妊退職」が社会にどのような影響を与えているかということです。不妊退職による経済的損失についてFineがこのほど試算をした結果、実に1,345億3,363万円という数字がでました。しかしこれには、退職者にそれまでかかった育成費用や、その補填のための人材雇用の費用は含まれていません。この費用を40歳の女性で試算したところ、737憶6,908万円という数字もでており、不妊退職の経済損失と合算すると2,083憶271万円と試算されます。

(NPO法人Fineプレスリリース:
https://j-fine.jp/prs/prs/fineprs_kokkaibenkyokai200130.pdf

不妊はもはや、社会的な課題
 不妊はよく「プライベートな話題」「個人的な問題」と言われます。しかし、この数字を見ると、もはや不妊は一個人、一企業の問題ではなく、社会的な課題であると言わざるを得ないのではないでしょうか。企業も潤沢に人材がいるわけではなく、ぎりぎりで回しているところも多い中、大変なのは理解できますし、この「不妊治療」に関しては、正しい情報が知られていないことこそが、第1段階の課題であると感じています。ですから、不妊治療に対してだけ特別に扱ってほしいというわけでは決してなく、例えば、すでにある休暇制度等を「不妊治療にも」使えるようにしていただくだけで、当事者は大変助かるのです。まずはそこから始めていただけたら、仕事を辞めずにすむ当事者は少なからずいるはずで、上記のような経済的損失も減らすことができるでしょう。

 不妊治療と仕事の両立に関しては、この春にも厚生労働省から「両立支援マニュアル」が発表される予定となっています。「働きながら○○○をしたい」という○○○に入るものは、育児、介護、通院、不妊や不育の治療、なんでもいいと思います。必要なのは制度もそうですが、それよりもまず、「風土」。「お互いさま」と支えあえる社会こそ、今、求められているものではないでしょうか。

「治療を続けるなら、辞めてほしい」と会社が…「不妊退職」の経済的損失は1345億円!?
松本亜樹子
松本亜樹子(まつもと あきこ)
 NPO法人Fine理事長/国際コーチ連盟認定プロフェッショナルサーティファイドコーチ
 長崎市生まれ。不妊経験をきっかけとしてNPO法人Fine(〜現在・過去・未来の不妊体験者を支援する会〜)を立ち上げ、不妊の環境向上等の自助活動を行なっている。自身は法人の事業に従事しながら、人材育成トレーナー(米国Gallup社認定ストレングス・コーチ、アンガーマネジメントコンサルタント等)、研修講師として活動している。著書に『不妊治療のやめどき』(WAVE出版)など。
Official site:http://coacham.biz/
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