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2020年01月21日00:53

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手段の目的化を解消するには 〜 型破り校長の改革論(3)

手段の目的化を解消するには 〜 型破り校長の改革論(3)
1/20(月) 21:40配信ニッポン放送
千代田区立麹町中学校・工藤勇一校長 × 大橋未歩 対談インタビュー
<第3回>
2014年から千代田区麹町中学校の校長を務める工藤勇一氏。宿題、定期テスト、固定担任制の廃止など、異例の改革を次々と行う手腕には多くのメディアが注目し、麴町中学には文部科学省など全国の教育関係者が視察に訪れる。その大胆な改革の根底にある子育て論についてまとめた『麴町中学校の型破り校長 非常識な教え』(SB新書)を著した工藤校長に、フリーアナウンサー・大橋未歩がインタビュー。ニッポン放送「大橋未歩 金曜ブラボー」(2019年12月20日放送分)での対談の再録として、全4回にわたりお届けしている。

手段の目的化を解消するには 〜 型破り校長の改革論(3)
工藤勇一 麴町中学校長
■全員の愚痴を見えるようにする
「千代田区立麴町中学校の校長・工藤先生は公立中学とは思えない校内改革をされています。一見非常識とも思われるような改革を実施しているのですが、お話させていただくと、非常識どころか納得な改革ばかりです。私も会社組織に15年くらいいましたから、会社組織にも取り入れたいと思うような改革ばかりでした。工藤校長の口からは『手段が目的化してしまっている』というキーワードが何度か出てきます。大きな目的を達成するための手段であるはずなのに、いつの間にかその手段を達成することに一生懸命になってしまって、目的を忘れていることがあるのではないかということです。例えば、私の会社員時代には会議でもそういうことがありました。会議でさまざまな社員が意見を揉むことが目的なのに、とりあえず出席することが目的になっていて、報告するだけで終わることがあったなと。なぜ大きな目的を見失ってしまうのか、手段が目的化してしまうのかということに対して、工藤校長は具体的な改革に取り組んでいます。その具体的なプロセスについてうかがっていきたいと思います」(大橋・談)



【工藤 勇一 氏 プロフィール】
1960年、山形県鶴岡市生まれ。東京理科大学理学部を卒業後、山形県と東京都の公立中学校で教員。その後、東京都や目黒区、新宿区で教育委員会に勤め、2014年から千代田区立麴町中学校の校長に就任。麴町中学では宿題の廃止、定期テストの廃止、固定担任制度の廃止など異例の改革を実行。その日常識とも言える改革は多くのメディアで取り上げられ、麴町中学には文部科学省など全国の教育関係者が視察に訪れるようになった。



(※以下、「――――」部分はインタビュアー・大橋のコメント)

―――― 組織のなかにいても、新しいことをしようとすると「慣例だから」「慣習だから」「前例がないから」と一蹴されることもあると思います。そこをどう打破していくのかというところで、先生はどうされたのですか?

工藤:その組織がある目的を実現しようとするときに、手段が目的化することが大問題だと誰もが実感しないといけません。うまくいっているときだったら、手段が目的化しているときでもよしとしてしまうじゃないですか。でも、結果として無駄なことをいっぱいやっていると。

―――― 先生は新しい改革をされるときに、どうやって当事者たちに実感してもらったのですか?

工藤:学校経営は、僕の頭のなかには2つしかないのですよ。1つは、6年前に赴任したときにはみんながいろいろな不満をそこら中で述べている、ごく普通の組織でした。これは、日本のあらゆる組織で起こっていますよね。あれが悪い、これが悪い、仲間が悪い、上司が悪い、組織が悪いと言います。それと同じことが学校のなかでも起こっています。それを変えるためには、とりあえずその文句を全部オープンにすることが大事なのですよ。

―――― 全員で愚痴を言い合うということですか?

工藤:全員の愚痴を見えるようにして、同じ土俵に上げるのですよ。
■勉強したくなる仕掛けをつくる
―――― なかなか怖くて言えない、という人はいませんでしたか?

工藤:無記名で構わないので、教員や子どもたち、保護者からもあらゆるものを集めていく作業をしたのですよ。1年間で340項目上がったのです。それを解決する方法をみんなに考えてもらいながら進めていって、170改善できたのですね。そうすると、いままでの組織だったらあることをやめたい、またはやりたいと言った場合に、トップの校長にそれを代弁して貰いたいわけですよね。私のところへやってきて「これやめませんか」と言う人がいて、別の人は「もっと充実させませんか」と逆のことを言うわけです。トップが決定してくれないから、つまり、人に頼って当事者意識がまったくない。解決するのはトップがやることであって、自分がやることではないと思っている人が多いのです。

それを変えていく作業が必要なので、まずは全員を当事者に変えていく作業が必要なのですよね。その上、段々と決定する権限を与えてあげるのですよ。当事者に変えるだけだったら、それぞれの組織に権限を与えて、「決定していいよ」と言えば当事者になれます。でも、これだけだと組織は失敗するのですよね。もう1つ必要なのです。なぜかというと、権限を与えると自分の過去の成功体験や自分の価値観、優れた事例を持ってきて、「これをやれば成功する」と言い始めるのです。そうすると、自分の価値観にこだわるために対立が起きたら声の大きい人が勝ったり、みんなの意見に折り合いをつけて目的がわからなくなったり、目的が実現できなくなったりしてしまうのです。

―――― 全員に忖度しただけで終わってしまうのですよね。

工藤:そういうことです。それが起こらないようにするためには、いちばん上位の本当に育てたい目標を全員で合意するかどうかなのですよ。宿題の話に絡めると、2つのタイプのお子さんがいるとします。1人は自分で考えて自分で行動できるけれど、成績があまりよくない子。もう1人は自分では何も考えられない、決められない、言われたことは黙ってやる。でも、成績がいい。どちらのお子さんを育てたいですか? 最初のお子さんは、後で伸びる可能性があります。

―――― 自立しているけれど、いま勉強ができない子。

工藤:いまはこの子にモチベーションが湧いていないだけだけれど、自立しているから、自分で決めたらどんどん自分で探せていく。問題解決できる力を持っている。もう1人の方は、言われなければできない子。どちらのお子さんがいいですか? と聞いたら、保護者の方は必ず前者を選びます。そうすると、成績がよくないから、この子の成績が上がるためにつきっきりで勉強を教えることが本当にいいことなのか、ということになりますよね。

―――― それを保護者の方に考えて、選ばせる。

工藤:選ばせるというより、放任してはだめなのですよね。勉強したくなる仕掛けをつくることが大事で、放任してしまったら勉強できなくなります。学び方を知ること、学ぶことが楽しいというきっかけを与えてあげる環境をつくってあげればいいのです。日本の場合、小学校6年間で散々手を掛けられているので、リハビリ作業からやらなければいけないという問題点があるのです。

――――マイナスからのスタートなのですね。

工藤:簡単に言えば、経営は手段が目的化しないようにする必要があるということを、組織の構成員全員が体験で実感できるようにしていくのです。これに3年くらいかかるのですよね。

―――― 各家庭、子どもによっても価値観や能力が違いますよね
■日本の教育には無駄なことが多い
工藤:何度も繰り返して。私たち自身、手段が目的化することが染みついているので、手段が目的化していることに気が付かないのですよ。例えば、誰も読まない作文を書かせたり、4月に1年の抱負を書いても誰も読まなかったりするわけですよ。これでは意味がないでしょう。でも、これをまことしやかに正しいものとしてみんなやっている。多くの教員が疑わないで毎年続けていますよ。

―――― なぜなら、毎年やっていることだから。

工藤:うちの学校は作文を書かせないし。

―――― 変えていく過程で、ハレーションはもちろんあったわけですよね?

工藤:大きなことはなかったかな。

――――麴町中学が育てたい子どもというのは、自分で考えられる自立した子どもだということで、全保護者と教員、生徒が納得したということですか?

工藤:完全にではなく、大体です。当然、不満を言う方はいました。宿題を出さなくなったら、「うちの子は宿題を出さなくなってから、勉強をしなくなりました」と言う保護者の方はいました。

―――― どうしたのですか?

工藤:「おたくのお子さんは宿題を出しても、勉強しないよ」と言いました。だいたい、宿題を出したってわかるところしかやらないし。

―――― 保護者の方は何とおっしゃっていましたか?

工藤:黙っていましたよ。ちょっと悪いことを言ってしまいましたけれど。でも、たぶんみなさんもわかっていることだと思うのですよ。知っている漢字を30回書けと言われたって、この時間は無駄でしょう? でも、日本の教育にはそういうことが多いですよね。

手段の目的化を解消するには 〜 型破り校長の改革論(3)
大橋未歩  工藤勇一 麴町中学校長
次回・最終回=第4回(1月21日掲載予定)では、「海外と日本の子どもたちの意識の違い」について訊いていく。
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