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2020年09月29日19:54

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妄想小説 暁烏 76

ビール小説 暁烏 76ビール
「徳田親分はそれで許してくれたの?」
 咲さんがもっと続けてと言いたげに俺を見た。マスターも興味深そうに促す。
「後になってからわかったのだけど、京子ママは竜二兄さんの愛人でね、駅で俺に声をかけたのは偶然ではなかったんだ。竜二兄さんからの電話で、実は俺を迎えに来てたんだって・・」
 京子ママも、親分も、俺がやくざになる気が無いのは解っていたらしい。竜二兄さんが電話で「やくざになったら自分の片腕にしたい小僧がいる」と言ったので、俺に興味を持ち、ひと芝居打ったと言うことだった。
 サブと俺との喧嘩は、事務所で手当てを済ませられる軽い物では無かった。サブは俺に噛みつかれた右目がヤバそうだと病院に運ばれ、俺は親分の部屋で意識を失い、結局ふたりとも入院する羽目になった。同じ病室に入れらて、俺はいつサブに襲われるかとヒヤヒヤしたが、サブは以外にも友人になろうと言い出した。サブの右目は、結局見えなくなると聞いて詫びる俺に、サブはやくざの勲章だと笑い、自分は極道で名を上げると夢を語り、極道の世界のことをいろいろ教えてくれた。
 サブの話しによると、徳田親分は組の看板を掲げているが、土木工事の会社や中古自動車の販売など表の仕事もしているやくざらしい。いずれ組は解散せざるを得なくなると言うのが口癖で、いくつも会社を作り、組員が将来カタギとしても生きられるよう、幹部を社長や専務にして事業を任せているらしい。カタギになりたい者は足を表せ、やくざでしか生きられない者はやくざになれば良いと考えているそうだ。
 徳田親分の読みどうり、時代がやくざと暴力団を混同し、警察もある程度の取り締まりをせざるを得なくなった。暴力団は銀行員や公務員などから転落した、頭の良い悪人を取り込み、細々とやっていた裏稼業、拳銃の密輸や麻薬の密輸などの非合法活動を行うために、地下へ潜った。義理と人情で生きて来た昔から続くやくざが矢面に立ち、次々と組を解散させられ、締め出された。政治家や警察にとって、その方が都合が良かったのかも知れない。やくざはやくざなりの信義と情があり、政治家や警察の言いなりにならないが、暴力団は適当にお目こぼしをしながら取り締まれば、裏金を回してくれたり、裏仕事をしてくれる。
「赤崎さんはやくざは良くて暴力団は悪いと考えているのですか?」
 SAKIのマスターに俺は答えた。
「昔のやくざは、町の自警団的役割を持っていたと思います。火事の時などの火消しや、盗賊一味から町を守るために、今でいう警察的役割の奉行所に協力していたであろうことは、映画や小説で書かれていますから・・ただ、彼らの多くは 気性が荒かったり、遊び人だったりしたようですから、本質は暴力団になる要素をもっていたと思います」
 咲さんが言う。
「赤崎さんが、会った竜二さんや徳田親分は、変な言い方だけど良いやくざ?」
「違うね。徳田親分も、表だけでは皆をまとめられないと解っていたから、竜二兄さんを奄美大島に渡らせて、麻薬や拳銃の密輸ルートを作らせていたのだし、結果的には悪人だよ」
「赤崎さんがもしやくざになっていたら、どんな組織を作っていたでしょうね」
 咲さんはそう言いながら時計を見、
「あらもうこんな時間・・お腹空いたでしょう?お昼にしましょう」
そして話しは一旦休憩になった。(続く)

コーヒークウネル日記コーヒー
  明日はまた雨かな?そんな気がするクウネルです。今朝、久しぶりに月を見ました。今の時期、昼間に空にあって、朝が来ると消えるようです。雲ひとつない空の満月を西の空に見たのですが直ぐに沈んでしまいました。今朝は朝焼けも色が出たのは一瞬。面白いのが撮れなかったので、夕方にもう一度と思っていたのですが、ちょっとのつもりの昼寝がたっぷりになってしまい、結局朝撮った写真をPCに取り込む作業・・明日頑張ろう(笑)
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