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2020年09月25日21:07

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妄想小説 暁烏 72

ビール 暁烏 72ビール
「真一さんの生い立ちは小説になりますね」
 俺と咲のやり取りを聞いていたSAKIのマスターがパイプタバコに火を点けながら言う。
「小説は無理でしょう。恋愛の絡みもないしエッチ場面もないから売れませんよ」
 俺の応えに咲が笑う。
「何度もチャンスを逃した男で、書けばいいわよ。モテそうでモテない男の失敗談は意外と興味を引くかも・・」
「モテそうでモテないはひどいなぁ。チャンスに気付かぬふりをしただけで、意外とモテてはいたんだぜ」
「アハハ、結果が全てよ。モテる男は何人もの女性をいただいちゃってるし、別れがじょうずだから、恨まれることも無い」
 俺は最初、マスターや咲さんを警戒していた。美佳に連れられて入った喫茶店で、それほど話してもいないのに、俺の過去を知っていることに驚かされ、俺を古代地球に不時着した異星人の末裔などと言い出したのだ。大阪でやくざの親分を訪ねた時以上の用心をしたのは当然だと思う、俺は少し緊張し、どう逃げるかを考えながら対峙していた。
 中学を卒業と同時に、俺は隣村にいた竜二と言うやくざ者に金を借り家出した。初めて島から出た都会。あまりの人の多さに驚き呆然とした。竜二兄さんに教えられたとうり、鹿児島市で汽車に乗り大阪へ着いたのだが、竜二兄さんの親分が住む此花区へどうして行くかがわからない。意を決して近くにいた年配の男性に声をかけたが、返事もされずに立ち去られた。他の者も態度は一緒。じろりと睨むだけだ。
 困っていた時に、京子ママが声をかけてくれた。
「あんた家出して来たん?行く当てあるん?」
 俺は竜二兄さんが書いてくれた親分の住所を見せた。
「徳田親分のとこやね、あんたやくざになるん?」
「やくざになる気はありません。島で親しくしてもらった兄さんに、とりあえず訪ねろと言われただけです。仕事が見つかるまで面倒見てくれるよう電話して置くと言ってくれました・・」
「島?あんたシマンチュ?ハゲェ・・島はどこ?」
 恭子ママの方言に驚いた。奄美大島は北部と南部で方言が違うが、会話の最初に「ハゲェ」と使った所から察するに南部出身だ。しかも俺の島加計呂麻島の海を隔てた向かいの町古仁屋のの森山商店の娘だと言う。古仁屋は本島の最南端に位置する町だが、加計呂麻島の村全部を吸収合併した瀬戸内町の役場所在地である。森山商店は桟橋近くのスーパーを経営しており、加計呂麻島の人間は誰でも知っている。
 京子ママは徳田親分と同じ此花区で喫茶店をしていると言う。此花区は通称、沖縄村と呼ばれ、沖縄や奄美大島出身者が多く住んでいると話してくれ、自分の店で働かないかと誘ってくれた。(続く)

 コーヒークウネル日記コーヒー
 新聞配達中は雨でしたが昼前から晴れました。で、久々に散歩。暑いかと思いましたが風があったのでそれほどでも無く田んぼに水を引く用水路ぞいに2時間ほど歩きました。
 彼岸花はそろそろ終わりですね。枯れたのが目立ちます。稲穂も黄金色になってきました。10月になったら一斉に稲刈りでしょうか?
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