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2020年09月23日20:18

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妄想小説 暁烏 70

小説 暁烏 70ビール
 人は信頼が深ければ深いほど、裏切られた時のショックが大きい。その反動が、時に相手を憎んでしまうこともある。その感情が無い俺は、一種の欠陥人種かも知れない。いや、本当は裏切られたショックが大きいことを知っているから、最初から人を信じないようにしているのかも知れない。
 俺の父親は、スーパーマンだった。釣りへ行けば、いつも大漁で、自分の家では食べきれないから、村の年寄りたちに配って来いと俺に言い置き、三味線を抱えて広場へ行く。
 親父が三味線を弾き島唄を歌うと、あちこちから人が集まる。親父は島一番の歌い手であり、親父の歌と三味線に合わせて踊るのが村人の唯一の娯楽であった。
 親父が山へ行くと、猪を仕留める。いつの間にか猟師免許を取っていた。時には3頭仕留めたが、持ち切れなかったので山へ置いて来たと、村人の誰かに言い、村人が回収に行くことも多い。
 特に固定した職業は持っていなかったが、親父は何でもでき、アルバイト的な仕事で、じゅうぶん食って行けた。そんな憧れの親父に、俺は何ひとつ似た所が無い。親父の優れた遺伝子は全部弟に行き、俺はそっくり母親の血を引き継いだ。大島紬の織子であった母は、暇さあれば本を読み、戦争体験記を書いたりしているいわゆる文系女史だ。
 俺は弟を羨みながら育った。弟は背が高く、スポーツも得意だが歌もうまい。手先も器用でいつも女子にモテる。母親似の俺は不器用で脚が短く、女子の前に出ると緊張してどもる。
 中学に上がってすぐだったか、親父に「僕はどうして父さんに似なかったの?」と聞いたことがある。毎日酔っぱらい、ほとんど家に帰らぬ親父に文句を言うでもない母親にそっくりな自分が嫌になり、自分を元気づけたかった。甘えたかったのかも知れない。だが、親父の答えは「そりゃそうだよ。お前は俺の子じゃない」だった。そして俺の父親は本当は順三おじさんだと言った。後で知ったのだが、それは親父の冗談だったが・・
 俺は心臓が止まるのではないかと思ったほど驚いた。順三おじさんは戦争で片足を無くして帰って来た独り暮らしのおじさんだった。村の誰とも口を聞かない不気味なおじさんで、昼間は家から一歩も出ず、夜になるとまつば杖をつきながら村を彷徨う。
 働けないから貧乏で、髪も髭も伸び放題、洗濯してないようで近づけば嫌な臭いに顔をそむけたくなる。
 なぜか俺の母は順三おじさんが住む家の近くの川まで行って魚や猪をさばいたり、野菜を洗ったりする。帰る時には必ず忘れたかのように野菜や魚、猪肉などを少し置いて行くのだ。それは順三おじさんのために置いて行くのだと、俺は気づいていた。親父に言われ、改めて順三おじさんの体型を思うと、体型が俺に煮ているように思える。母が食材を少し残すのは、順三おじさんへの愛情かも知れなかった。母は親父と結婚する前に順三おじさんと付き合あっていたのかも知れない・・(続く)

コーヒークウネル日記
 今日は整骨院へ行かねばと思っていましたが、元気なく断念。新聞配達も最後のこーすで、1枚残ってショック。どこを配り忘れたのかを思いださないので、再度廻ってポスト確認でした。最後近くの3軒固まっている場所の1軒を配り忘れていました(汗)


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