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2020年07月31日19:19

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妄想小説 暁烏 19

蟹座 暁烏 19
 その日の夜、咲さんが顔を出した。昼過ぎに美佳に連れられてタバコを吸いに行った店の娘である。営業時間を確かめていなかったので、朝は何時から営業しているかわからなかったが俺は朝食前に散歩がてらに行って見ようと思っていた。たぶん早起きするだろうから、看護婦詰め所に散歩したいと、断って外出するつもりだった。
 以前、胸に腫瘍が見つかって国立病院に入院した経験がある。その時の経験で、深夜でも早朝でも、どこにいるかを告げておくと大騒ぎされることがないことを知っていた。規則にやかましい病院もあるだろうが、軽症の患者にはわりと甘めだ。美佳が務める病院だから、散歩だと言えば許されると思っていた。
「珈琲の出前に来ました。注文は受けていないですけど」
 咲はコンビニで買ったらしいコーヒーを差し出した。
「うちのコーヒーよりはこっちが美味しいだろうと思いまして・・」
「まずくはなかったですよ。一応豆から挽いていたし・・」
「お爺ちゃんなりに、こだわってはいるみたいだけなんですけどね。濃くて苦いのがコーヒーだと思い込んでいるから・・」
「深煎りの豆を使っているようだったけど、深煎りはね、鮮度の落ちるのが早いんですよ。いくら上手に点てても、鮮度の悪いコーヒーは限界があります」
「やっぱりね、砂糖を入れてたから、そうじゃないかと思ったわ」
「ちょっと癖がありましたが、人間の脳って、意外と馴染んだ味を美味しいと感じるんですよ。あの癖になじんだら、他のコーヒーでは満足できないくらいのファンになるかもしれませんよ。それなりに楽しめましたよ」
 自家焙煎をやっている珈琲店には、自分の店が一番と妙なプライドを持っている店が多く、この味が解らぬようではコーヒーを語る資格なしと、うそぶく店も多かったが、俺はそう思っていなかった。こだわりは自分の理想であって、うちのが一番美味しいと、客に押し付ける気はなかった。コーヒーなんて、まずいのはまずいなりに、美味しいのは美味しいなりに楽しめば良いのだ。ただ自分は自分が美味しいと思えるコーヒーを追求するだけ・・
「今なんてすごいですよ。スーパーで200g320円のメチャ安いコーヒーを買ったら、そこそこ飲めたので、今はそればっか・・。点て方も一度にざ〜っとお湯を入れてほったらかし・・たぶん、もう味はわからない」
 俺がコーヒー屋をやっていたことを知っていた咲さんにウンチクを述べる自分の感情を、俺は不思議な心持で眺めていた。咲さんに認められたいと思っているようだ。なぜ?・・(続く)

獅子座クウネル日記 
 今日も暑いですね。天気は良いけど、朝焼けの頃は薄い曇り。陽が昇るのが5時半ごろと、少しづつ遅くなっています。朝食をとらず、配達が終るとすぐに出れば朝焼け撮影が可能になって来ました。でも、さぼりました(笑)作田遅くまでテレビ見たので、眠くて眠くて・・
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