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2020年07月15日20:05

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小説風妄想 暁烏 3

蟹座 暁烏 3
「何で?何で俺はカラスとしゃべれる?まさか死んだのか?」
 死んだと思ったのは直感だ。死んで俺はカラスに生まれ変わった・・ふとそんな気がした。生きている時に善意を施した人間は天国に行き、極楽浄土で新たな人生を送ることが出来るが、そうでないものは地獄に落ちる・・
 もの心着いた時からそう教えられ、なるべく悪いことをしないように生きて来た。だが天国へ行けるほど、良いことをしたか?と自問すると自信が無い。大きな悪いことをした記憶はないが、小さな悪いことはしている・・自販機でジュースを買った時に、先に買った人が釣銭を取り忘れ、10円残っていた時にラッキーと自分の物にしたこともあるし、花の写真を撮った時に、邪魔になる枯れ葉をちぎって捨てたこともある。
 爺さんカラスは俺の心が読めるようだ。
「おまえは死んでるよ。でなければ、こうして俺と話せるはずがない。お前は死んで、今地獄にいるのだよ。ちょっと偏屈なカラスになってな・・」
「地獄だと言ったって・・」
 俺は抗議した。もし地獄なら、朝焼けが川霧を赤く染めるような、こんな美しい場所であるはずが無い。もっと汚い、生きているのが嫌になるくらい、みじめでつらい場所であるはずだ」
「馬鹿だなぁ・・それは宗教家が創り出した幻想だよ。怖がらせて、自分の信者にするために天国を美しいものにし、地獄をつらい場所だと思いこませる策術。脅迫とも言えるね。地獄へ行きたくないと言う気持ちを持たせるためのね」
「何かで読んだぞ・・確か・・人は死んでも人であると・・霊界は人と鳥や獣などとは階層が違い、産まれ変わってもやっぱり人であると・・」
「しかし現実は違う。現におまえはカラスになって、人であった時と同じく趣味の写真を続けている」
 俺は夢を見ているのか?それとも狂ってしまったのか?どちらの要素も俺にはあった。最近眠りが浅く、極度の睡眠不足になっている。気を抜けばすぐに居眠りすることが多かった。散歩撮影に来る途中も、歩きながらふっと眠りに落ちそうになったりしていたのだ。
 狂ってしまうかもと言う恐怖は少年時代から感じている。生きる希望を持ったこともないし、周囲に習って善人を装うのが耐えがたく、感情を爆発させそうになるのを必死で抑えていたのだ。いつか発狂するかもと、不安を感じていた。
「カラスが写真を撮る・・そんな馬鹿な話しがあるか。第一、カラスがカメラを持てるか?」
「まぁ良い・・死んだばかりじゃ現実を受け入れられないだろうよ」
 ニヤリと笑うカラスの爺さん。笑みの意味するものは何か?そう考えた時に堤防をジョギングしていた若者が河原へ降りて来るのが見えた。本能的に俺は飛び立ち、シラサギがいた消波ブロックの傍へ移動した。(続く)

獅子座クウネル日記
 また大きな雨雲群が近づいているようですね。今日も眠い病で無意味に過ごしてしまいました。暑いのか寒いのかわからず、シャツを着たり脱いだり・・でもまぁ、妄想小説は書き継げたから良しとしましょう(笑)

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