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2019年10月18日20:53

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小説 秋物語り 21

小説 秋物語り 21
 だが、沖田は中野が来店するもうひとつの理由も知っていた。中野と前後して、必ず増山京子が顔を出すのだ。二人は偶然を装っているが、明らかに示し合わせている。たまたまでくわしたから挨拶すると言う程度の会話しかしないが、明らかに身体を合わせた男女の間に流れる空気感を感じる。
 二人は沖田とさりげない会話をし、コーヒーを飲んで時間差で席を立つ。40女とは言え、京子は美しい顔立ちをしており、スタイルも良い。ぱっと見30前半にしか見えない。それでいて人妻。豊富な性経験で生み出した艶然さもある。たぶん京子は中野のモデルをし、ついでに肉体関係も持ったのだろう。沖田はそう直感していた。
 他にも不倫らしき関係の客が何組かいたし、沖田は見てみぬふりをした。京子とは一度、ラブホの入り口までは行ったが、あれは沖田を監視しているチームをからかっただけで、京子と男女の中になりたいと思っての行動ではなかった。
 沖田は必要以上に踏み込まれるのを嫌う。自分が沖田信之では無く、本当は中村義之と言う70歳を超えた年金生活者であった過去を知られるのを嫌がっているからでは。表面は人なっこく、だれとでも親しむ快活さを装っているが、本質は、信用できる者としか付き合わない孤独タイプなのだ。
 ドクター・メリーは自分で封印した過去が気づかぬストレスとして脳を疲弊させ、心を閉ざしがちだと言い、封印を解き放ち、本当の自分を取り戻さないと、ストレスは悪夢となって睡眠を邪魔し、心を蝕んで行くと警告するが、沖田はメアリーの警告さえ鬱陶しく感じる。 
 必ず人は死ぬ。産まれた時から決まっていて、70歳と言う、すぐに死ぬ条件の揃ってきたことを喜んでいた俺を、なぜそのまま死なせなかったのだと、メアリーに怒りを覚えることすらある。俺は中村義之の時代、早く死にたいと思っていたような気がする。おそらく、封印した過去は、中村義之のすべてだったに違いない。メアリーにそう言うと、メアリーは、中村義之に妻と娘がいたことを話し、都城の別な場所で開いていた珈琲店で幸せに暮していたことや、熟年離婚したが、新聞配達をしながら好きな写真を撮り、ブログ仲間も出来て楽しんでいたと告げ、死ぬ前には何億と言う母親の遺産が手に入ったことなどを強調する。沙耶と言う20代の娘と同居生活をしていて、沙耶はそのうち中村義之の子を産むはずだったと・・
 メアリーの指摘どうり、沖田はすでに睡眠障害を起こしていた。悪夢とは言い難かったが、日本の自衛隊の制服制帽で出勤する女の夢を良く見る。冷ややかな目で沖田を眺めるだけの女。夫婦らしい会話をするときもあるが、話しているのはいつも沖田だ。沖田が近づくと女の顔が歪み、ハブの身体に変る。細い二つの舌をチョロチョロと出し、飛び掛かる間合いを計っている。じりじりと後退する沖田の足にドロドロした何かが触る。見ると腐りかけの死体。沖田が転ぶと同時にハブが襲いかかる・・そんな夢が毎夜現れ、メアリーが処方した睡眠薬を飲んでも、1時間単位で眼を覚ます。(続く)

獅子座クウネル日記獅子座
 今日はやる気のない日(笑)雨は昼前後にちょっとだけ降ったようですが、散歩をさぼり、ちょっとだけ小説を書いて横になって、腹が減ったら食事して・・気持ちなねぇ・・
週末の撮影プランを立てたり、宮日総合美展を観に言ったりせねばとあるのですが・・それよりなにより、小説を書かないと明日アップ分が無くなり、書きだめないと、20日の飫肥城下祭りに行けないと焦っているのですが・・
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