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2019年10月17日20:27

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小説 秋物語り 20

小説 秋物語り 20
 元々のわがままなのか、年寄りになってわがままになったのか、中野はひるまない。財布から1000円札を1枚抜き出し、リズに渡す。
「近くにコンビニがあったろ。あそこで弁当買って来てくれ」
「あなた、帰ってください。ココの店に合いません」
 リズに渡された1000円札を中野に突き返しながらジョアンナが怒った。ジョアンナは気性が荒い。荒くれ男たちと対等に武闘訓練している。沖田は中野がどう出るかを楽しんだ。監視チームも、ジョアンナがいるから、まさか踏み込んでは来るまい。それだけ信頼されているから、丸腰で独り、店内に送り込んでいるのだ。中野もジョアンナが前に出るとひるんだ。先ほど手を掴まれた時の痛みを思い出したようだ。
「ごめん、冗談だよ・・そんな恐ろしい眼で睨むなよ‥恐ろしか・・じゃぁ、とりあえずコーヒーでいいや。とりあえずコーヒー・・」
「とりあえずブレンドでよろしいのいですね?1杯1500円ですよ」
 リズが確認のためにメニューを開き、「とりあえずブレンド」と明記されたのを見せる。これも沖田流のユーモアだが、沖田は11種もあるオリジナルブレンドの一番目に「とりあえずブレンド」を表記してある。
メニューも見ずにとりあえずコーヒーをと言う客に仕掛ける悪戯だ。メニューを見せて1杯1500円であることを確認させて、客を驚かせる。それでもかまわないと言う客には、仰々しく客の傍にワゴンでガス台やポットなどを運び、目の前で大げさなパフォーマンスを見せながら、うやうやしくインスタントコーヒーを作る。カップの半分を埋めたインスタントコーヒーの上に、深煎りのコーヒーをドリップするのだ。客はあきれた顔で沖田を見るが、インスタントコーヒーとレギュラーコーヒーの組み合わせは深みがあり、1500円と言う価格にも妙に納得する。客が納得するのでなく、沖田の納得ではあるが・・
 中野喜一は、車で2時間の距離をものともせず、週に1度は顏を出す常連客となった。ジョアンナとは肌が合わないのか互いに距離を取ったままだったが、沖田は中野が嫌いでは無かった。毎回たくさんのエロ写真的な女性写真を見せられることには困ったが、中野が若い時に撮り、入賞したと言う風景写真などは透明感があり、美しい心を持っていなければ撮れないだろうと思われたし、ぞんざいな口調はテレカクシに思えた。
 中野は時給3000円で写真のモデルをしないかと、客に声をかける。それに応じる女性客はまずいないのだが、応じられなくても中野は平気だ。自分の入賞歴を誇り、写真を見せれるのだから・・2時間かけてくる価値をそこに見出しているようだ。(続く)

獅子座クウネル日記獅子座
 今日は雨が降るような予報でしたが、どうにか雨は降らずです。早朝散歩は迷いましたが一応カメラを持って出ました。昼間はまだ暑いですが、朝晩寒くなってきました。散歩もジャンバーを着てです。今さむがっていたら、冬になったらどうしましょう(汗)
雲が多いので朝焼けは無理だろうと思っていたのですが、予想に反して一瞬だけ色が出ました。写真はちょうどその時、カメラを持ってその場にいた者にしか撮れません。写真の出来はともかく刻々変わる色や人の出現に慌てながら露出を調整したり構図を決めたりするのも、案外楽しいものです(笑)
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