小説 秋物語り 19
「ちょっと待ってろ」
中野喜一は、カメラをカウンターに置いたまま店の外へ出てすぐに何冊かのファイルを持って戻って来た。1冊はコンクールで入賞・入選した作品を記録用にファイルしたもので、もう1冊は最近撮っている女性ポートレートの作品集だと言う。
「これはマスターだけが見ろ。好きだろう?こういうの・・」
1冊は閉じたままで沖田に渡す。開くとヌードや水着の女性写真ばかり・・ヌードなど、紐で女性を縛ったエロ写真的なものまである。
「すみません。僕には刺激が強すぎます」
沖田はパラパラと見てすぐに閉じ、中野に返した。
「なんで?好きな癖に・・ま、いいや。マスターの店、女性客が多いから、立場もあるわな。女性を撮ってたらこんなのも撮れるから、マスターも何でもかんでも撮らんで女性専門にしろよ。撮り方は俺が教えたるわ」
中野は沖田が返したファイルを素早く足元に隠し、入賞・入選した作品の説明を始める。
写真が好きで、写真のことになると我を忘れるのか、単に自慢したいだけなのか、リズが再三注文を促しても知らぬ顔で、注ぎたすお冷を3杯も飲む。
「まずは落ち着いて・・コーヒーでよろしいですか?」
「なんでも良か・・あ、焼肉定食でいいや」
面倒くさそうに言う中野。
「すみません・・うちはコーヒー専門で、食事メニューが無いんですよ」
「あぁ?そんならカレーでもいいや」
「すみません。食事は出来ないのです」
「カレーぐらい置けよ。ごはん炊いてレトルト暖めるだけやろが。こっちは腹が減ったから何か食おうと思って来たんだ」
「申し訳ありません。コーヒーの香りを大事にしていますので・・」
厄介な客が来たぞと思ったが、駐車場入り口に「珈琲専門店・ここ・こーひーのみ」と大書した看板を出しているし、店の入り口にも「コーヒーの香りを大事にしているので、食事・たばこダメダメの店」のプレートを出している。オープン当初から食事メニューを出していないし、店内で弁当を食べることも遠慮してもらっている。トーストさえメニューに無いのだ。今では食事ができない店として定着している。だからこそ女性客が多いのだし、コーヒー好きの客しか来ない店なのだ(続く)
クウネル日記
朝は起きた時から首痛がひどく参りました眼前なのかなと、天気予報を見ると明後日ぐらいに雨が少し降るやもしれなさそう・・整骨院へ行く元気が出ず、だらけた一日を送りました(汗)
仕事はちゃんとするのに、散歩や撮影はすぐさぼります。明日は頑張って整骨院へ行きます。湿布だけでは持ちそうにないので・・
写真は季節を間違えて咲いたつつじと、まだ残骸を残しているあじさい、そして最後は頑張る農家のおばちゃん
ログインしてコメントを確認・投稿する