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2019年10月15日19:44

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小説 秋物語り 18

小説 秋物語り 18
 京子に志布志ランチを誘われている時、新たな客がカウンターへ座った。高級そうな一眼レフカメラを2台、首と肩にかけている老カメラマンらしい男だ。白いあごひげ、長く伸ばした白髪混じりの髪を後ろに束ねて、いかにも芸術家って感じだ。
 リズがお冷を出し、メニューを出す。男はしかし、リズの顔など見ていない。ホールから帰って来て、次に運ぶコーヒーが出来るのを待って立っているナンシーを見ていたと思うと、すかさずカメラを向ける。
「駄目。撮らないで。モデルはわたしの仕事でないわ」
 それと気付いたナンシーが大声を上げ、すばやく背を向ける。
「お客様、申し訳ありませんが、今の時代、本人の許可なく撮影は御遠慮願います」
 沖田が声を上げた時にはもうジョアンナが男の背後で手を掴んでいた。
「撮りゃせんが・・ファインダーを覗いただけ」
 男は愕いていた。姿の見えなかったジョアンナがいつの間にか背後にいて、シャッターを切らせまいと手を掴んだのだ。力の強さに驚いたのかも知れない。痛そうに顔をしかめている。
「悪かった。良い雰囲気だったので、本能でカメラを向けたんだよ。スナップはそういうもんだ。許可は後で取りゃよかろうが・・」
 老カメラマンは悪びれない。カメラをカウンターに置くと、ポケットがたくさんある薄手のベストから名刺入れを抜き出し、沖田やジョアンナや、ナンシー、そしてカウンターに座っていたすべての客に名刺を渡す。
 名刺には「宮崎写真クラブ会長」の肩書と並んで「カメラ雑誌・県美展・宮日美展その他コンクールで入賞・入選多し」と自慢げに刷り込まれている。中野喜一の名前の下にはフエイスブックやメールアドレスも刷り込まれていて、腕の良いカメラマンらしさを認めさせたいと意識した作りだ。ベテランらしい雰囲気もあり、妙な人なっこさもある。住所が日南市になっているので、思わず沖田は声をかけた。
「日南の方ですか?僕も写真やっていて、たまに日南へは行くのですよ。朝焼けを狙ってですが、なかなか良いタイミングに出会えません」
「マスターも写真やってるの?どこかクラブに所属してる?」
「いえ・・僕はただ撮るのが好きなだけで・・それに暇な時に散歩しながら目についたものを写すことが多いです」
「いかん、いかん・・独りででたらめに撮ってたって全然うまくならないぞ。写真は上手な人に見てもらって、アドバイスを受けないと・・人に見せれない写真を撮るなんて恥ずかしいやろ、写真やってるなんてよう言えるな」
 こうして中野喜一は常連客となり、京子との志布志ランチの話しは中断された。(続く)

獅子座クウネル日記獅子座
 新聞休刊日はリズムが狂います。久しぶりに雲海を狙って、たちばな天文台まで行く予定で、昨夜はいつもより少し早めに寝たのですが、いつもの配達時間に眼が覚め、もう少し寝れるとそのまま布団から出ずにいると、次に目覚めたのは午前7時(汗)早朝散歩へ出る気も無くなり、いつもは午後に行く整骨院へ朝から行きました。
 午後から高千穂牧場あたりへ行くつもりでいたのですが、整骨院が終ると面倒になって・・結局、小説を少し書いて、昼寝して、夕方散歩へ出ました。今日の夕焼けは陽が沈むときの色だけで、沈んだ後の残照が少なくがっかり・・なかなか思うように行かないものです(笑)
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