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2019年08月18日09:23

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小説 夏物語 29


「すれた女みたいなこと言うなよ」
 義之はスイと身体をかわし窓辺へ近づいた。田中さんの部屋で鈍い音がした。気配で田中さんが部家の電気を点けないまま台を重ね、カメラを抱えて登ろうとして落ちたと思われた。
 田中さんは沙耶の帰宅を知り、急いで沙耶の部屋を覗こうとしたのだが、沙耶がすぐに電気を消し、義之の部屋へ入ったと知って義之の部屋を覗こうとしたのだ。沙耶の部屋は同じ高さだし、覗くのは容易だったろうが、2階から1階の部屋を見下ろして覗くのは簡単ではない。それなりに知恵を絞ったはずだ。
 クーラーが故障しているので義之は窓を開け放っている。ただでさえ防音対策の無いアパート。窓を開けていると室内の声は田中さんの部屋に筒抜けであったろう。田中さんもまた窓を開け放っていた。
「田中さん、また覗いてるの?」
 沙耶が窓辺に来て田中さんの部屋を見上げる。
「ちょっと様子がおかしいぞ。転んだ時に怪我でもしたのかも知れない・・」
 言いながら義之は田中さんが血を出していると思った。向かいのアパートの造りは、義之たちのアパートと違って、台所が義之たちのアパートを向いた側にあるようだ。窓にかけられた鍋やフライパンの影でそう思っていた。台所に立っている時、田中さんはたまたま沙耶の部屋が覗けることを知ったのかも知れない。沙耶が着替えているのを見たかも知れない。血の匂いと同時に呻き声が聞こえる。
「どうもおかしい。ちょっと様子を見て来る」
 義之は急いで部屋を飛び出し、山田さんの部家へむかう。ドアの前で、山田さんの隣に住む老人ががドアを叩いていた。
「なんか倒れる音がして・・うめき声がする・・」
 老人はドアを叩き山田さんを呼んでいる。義之はドアを開けようとしたが中から鍵がかかっている。義之の呼びかけに応え、山田さんの助けを求める返事があった。包丁が腹に刺さったと聞こえた。老人と義之は顔を見合わせた。なんとかドアを開けようとするが開かない。他に入り口は無い。
「救急車を読んだ方が良いみたいだね」
「いや、警察が先かも・・」
 同時に声が出、義之は階段の下に顔を出した沙耶に言った。
「110番して・・怪我をしているみたいだけど、鍵がかかってって入れない・・」
 騒ぎを聞いた他の住人たちも集まり、遠くからサイレンの音が近づいて来た。(続く)

獅子座クウネル日記獅子座
 また雨が近いようです。昨日は宮カメに市美展用のプリントを依頼には出たのですが、雨前の情緒不安定でどの写真にするかを決めれず、5枚ほどの候補の中から店長に1枚選んでもらいました。帰りに神柱公園を覗いてちょっとだけ散歩写真と思っていたのですが、その元気が無く、帰宅してそのまま昼寝。どんどん怠け者になって行きますふらふら
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