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2019年02月22日05:30

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小説 紅蓮 45

小説 紅蓮 45
 由紀子と大木さんに問われるままに、俺は離婚の経緯を話した。
「今考えると、娘が店を継ぎたいと言い出した頃から女房と娘の間で、計画されていたのかも知れない。俺の年金が支給されるようになったら、俺は店をしなくて良いって言いだしていたから・・」
 新婚初夜からセックスを拒否した佳代子が、子供を作りたいと言ったのは、結婚後3年ほど経ってからだった。母親や親戚から子供はまだかとせかされているという。
「それは俺も同じさ。でも、佳代子さんが嫌なら無理に造らなくても良いと思うよ。子供が欲しいなら、どこかの施設に頼んで親のいない児を探してもらうって方法もあるし・・」
 俺は軽く受け流した。セックスの無い夫婦生活にすっかり慣れていたし、突然何を言い出すんだと言う想いもあった。この女は子供を作るのにどんな行為が必要だと解っているだろうか?口にするのも嫌だと言っていたのに、どういう心境の変化?警戒心の方が先に出る。
 3年も同居すると、朝しか会話をしないとはいえそれなりに夫婦らしくなって来る。佳代子の親戚に冠婚葬祭があった時など、揃って出席したし、俺は商売柄腰が低く相手を気遣う。佳代ちゃんは良い婿を摑まえたもんだと親戚の評価は高かった。親族の集まる度に赤ちゃんはまだかと、問われている。
「もらい児ってわたしの血を引いてないのよ。育てるのは損じゃない?」
「子供は損得で考えてはいけないよ。子供にだって人格がある。親に出来るのは、人格を尊重しながら、間違った大人にならないよう道を与えることだと思うよ。叱ったり導いたり、親は子供に育てれることも多いのではないだろうか?」
 俺と佳代子の子供に対する考え方は大きく違った。俺は夫婦として暮らしながら、自然と肉体の交わりを持ち、その副産物で産まれるのが子供ではあるが、子供が出来にくい体質であるなど、何らかの事情で、子供が欲しいのに出来ない場合など、積極的に養子を取るべきだと思っていた。自分たちの血を引いているかどうかが問題では無い。子供を育てると言う行為は、夫婦を親として育てる。損得では無く、夫婦として成長するための学習の場なのだ。母親だけ、父親だけでも子供は育てられ、結婚していなくとも親になることは出来る。ただ、片親で育てるには、仕事との兼ね合いがあり、今の制度上困難である。
滅多に反論しない俺が、珍しく自分の意見を言うことに、佳代子は返事もしなかった。(続く)

獅子座クウネルのつぶやき獅子座
 降るような降らないような、微妙な雨です。で、昨日から不調。今日はダウン気味。寝ます・・

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