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2018年01月06日07:05

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妄想小説 風舞 25

           妄想小説 風舞 25
 沈黙に耐えられないと言うのも俺の弱点のひとつかも知れない。思えば尚子が店に独り残り、カウンターに並んでコーヒーを飲んでいる時、俺はたえず何かをしゃべっていた。撮影中に知り合った写真仲間の話し、ブログで見た写真のすばらしさ、客から聞いたお店の話し・・客の噂話しになると話題を転じた。いいことでも悪いことでも、客の噂話しをしたくない。どこでどう本人に伝わるかわからない。だから尚子が島袋の話しをしても、話しを逸らせ話さないようにしていた。
 しかし、今は状況が違う。もう俺は店をやっていないし、なぜだかわからないが宮守家の伝説とやらに巻き込まれている。尚子の父親に会い、疑問に思いながら聞けなかったことを補足聞き取りせねばならないのだ。その真実を確かめねばならないのだ。
「尚ちゃんはさぁ・・ほんとうにあの子供のことを知らなかったの?」
「知らない。マスターが連れて来て初めて見たのよ。それに私の結婚相手が決まっていることも初めて知ったの・・母を問い詰めたら、その時期が来るまで好きにさせようと黙っていたらしいのだけど・・」
「そう言うことってあるのかなぁ・・いくら宮守家に由緒があると言っても時代が違うよ。反発する人間も産まれただろうし、これだけネットやテレビでいろんな情報が出るのだから、家系のルーツをもっと知りたいと思う人間も出たはずだよ」
「確かにそうだけど、子供の時からだからね。別に気にもしなかった。父はほとんど家にいないし、母と二人の生活だったけど、不思議だと感じたことって無かった・・第一・・マスターと父がどんな話しをしたかも知らないのよ。母は知らなくて良いって言うけど・・」
「知りたい?」
「そりゃ知りたいわよ。マスターのお嫁さんになることは構わないけど、自分がどういう役割をするのかくらいは知っておきたい」
「そうだよね。俺もそう思う。昔と違うのだし、俺は選ばれる資格のない人間だと思っている。尚ちゃんが俺を見極め、決めるべきだと思う」
 尚子の表情が変わった。店で親しんでいた頃のいたずら娘の顔。丸い眼を輝かせて意地悪な質問で俺を困らせようとする小悪魔の瞳。
「母からマスターが婿養子になるって言われた時にね。正直言うと、わたし・・マスターの介護をしなきゃいけないの?って思っちゃった」
 そう言ってぺろりと舌を出す。
「あはは・・確かにね。もう70だし、足腰弱ってるし、結婚相手では無いよね」
「あの爺さんが、どうして一晩でこんなに若返るの?考えて見ると私の両親もそうなのよね。父は65歳だし母は63歳なの・・でも二人とも40代にしか見えないでしょう?母の妹である妙子叔母さんや親戚の叔母さん叔父さんの方が両親よりずっと老けて見えるの・・叔父さんや叔母さんはみんな歳相応なのに、母と父はわたしの姉や兄に間違われるほどなの。なんで?」
 ふと後部座席に人の気配を感じた。誰も乗っているはずが無い。幼子はいつの間にか姿を消していたし、尚子を車に乗せた時、後部座席に誰もいないことを俺は確かめていた。(続く)

獅子座クウネル日記獅子座
 今日は晴れのようですが、明日明後日、また雨マークが・・そのせいかさつえいにでる元気がなくです、
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