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2016年02月18日05:02

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月が恋しい&小説 謎の女 9

 月が行方不明じゃないかと不安に思うこの頃です。しばらく月夜の中での配達と言うのがありません。月が登りだすのが配達を終わる頃だったのはいつだったか・・太陽と一緒に地球をまたぐので見ないままに終わり、気が付いたら夜空が雲に覆われていたことが続き、今も地球の裏側にいるのかもしれませんね。今朝も青空のようでしたが月が無い朝でした。女性は毎月1度はあると言うから・・あれ?

わーい(嬉しい顔)
小説・限無幻夢 (謎の女 9)
「必要以上に警戒するのがおじさんの欠点ね」
 大野理沙が俺の心を見透かしたように言う。俺は愕いた。やっぱりこの女は俺を知っている。何かの目的を持って近づいたのだ。何のために?ひょっとして胸の谷間が覗けるような衣服で部屋に上がり込んだのにも意図があるのか?
「スパイ工作を受けたのがトラウマになっているのね」
 自分の心を読まれたと思った。一瞬だったが、俺は20代前後に大阪で会った公安だと名乗る男のことを思い出したのだ。男の顔はもう覚えてすらいない。だが、言葉と態度は昨日の出来事のように覚えている。が、これまで誰にも話したことが無い。心の底に沈めた秘密の記憶。それをなぜ知っている?
「ごめん。あんたが怖くなった。今日は帰ってくれないか?なぜ俺を知っているのか聞きたい気もするけど、なんか聞くのも怖い。ちょっと落ち着かせてくれ・・」
「いいわ。驚くのも無理ないわね。落ち着いたら話すことにする。あなたはきっとわたしの話しを聞きたくなるはずだから・・」
 大野理沙が微笑んで起ちあがった。
「写真ありがとう。また撮ってね」
 部屋を出る理沙の形の良い尻を眼で追いながら、俺は黙って見送った。今朝の尾行の気配と言い、俺に何かが起こっている。いや起ころうとしている。そう思いながら魔法瓶に残っていたコーヒーを飲む。部屋へ戻った理沙が衣服を脱ぐ気配がする。室内着に着替えたのだろうか?わざわざ胸を開けたシャツを着たのも、予想どうり意図があったのか?何者だ?何の目的で引っ越して来たのだ?そんな疑問が湧き上がるのと同時に公安に脅された時の恐怖が蘇る。
 理沙が指摘したように、トラウマとなったスパイ工作を受けたのは20歳の誕生日を迎えたばかりの時だった。
 その頃俺は大阪で印刷工員として働いていた。中規模の工場で、従業員が300名ほどはいたと思う。労働組合活動も活発で、工員達のサークル活動も盛んだった。俺はハイキングのサークルに入り、休日ごとに六甲や京都へ出かけた。ピクニックをしたりどこかの公園でゲームを楽しむ40名ほどのサークルだった。レクリーダーに指名され、気が付けば中心メンバーの一人になっていた。
 サークルのメンバーであり、労組の執行委員でもある川添真一と特に仲が良かった。川添は高卒で、俺より5歳ほど年長であったが、ウマが合うと言うのだろう、年長と言うことを意識せず話せる友人であった。彼の頭の良さと統率力を尊敬し、目標としていた。
 その川添が共産党員であることを知ったのは、俺がレクリーダーだけでなく労組の仕事も手伝うようになった頃だ。川添は思想的な考えを押し付けようとはしなかった。自分が共産党員であることを堂々と述べたが、それは自分の思考を高めるために学んでいると言う立場を貫いていた。
「真一がアカで無ければ・・」
 川添に対する唯一の不満はあったが、俺の信頼と尊敬は揺るがなかった。友人であることを誇りに思っていたのかも知れない。(続く)

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