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2016年02月02日14:40

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小説・こっこ物語 (バラ一輪 41)

小説・こっこ物語 (バラ一輪 41)
「どうしたの?」
 夕食を用意して待っていた裕子が訊ねる。散歩の帰りに、俺は花屋の店先に置かれていた白バラの鉢を見つけ、購入した。特に意味は無い。なんとなく目に付き、なんとなく裕子に買って帰ろうと思った。透明のビニール袋に入ったバラに気づいて裕子がいたずらっぽい笑みを見せた。店の2階に作られた6畳ほどの休憩室。都城にいる時はそこが俺の部屋となる。厨房で作った夕食を裕子が部家へ運んだと聞いて俺はそのまま部屋へ上がったのだが、鉢花を部屋へ持ち込んだことに裕子は軽口を思いついたようだ。
「わたしにプレゼント?台風でも来させようと言うの?」
「何だよそれ〜っ。まぁ、たいした意味は無いよ。散歩中に眼に入って、お土産にしようと思っただけ・・」
「駄目ねぇ・・女性に花を贈るんだからお土産なんて言わずにプレゼントって言わなきゃぁ。それにどうせなら白いバラで無く真っ赤なのを30本くらいの花束にしなきゃぁ・・」
「赤色のバラなんてたくさんあるじゃん。白いバラは珍しいと思って買ったんだけど・・裕子さんが育てるだろうと思って・・」
「良く見かけるのは赤いバラが多いけど白もピンクも黄色もあるわよ」
「今は一輪しか咲いてないけど、蕾がいくつかあるからこれから咲くさ。花束にするより得した気分にならない?たくさん咲いてから自分で花束にしろよ」
「あはは、その花束をわたしがあなたにプレゼントするわけ?ま、花言葉で言えばそれが妥当だわね」
「花言葉?そんなのがあるの?」
「これだから男の人は・・バラは愛情を伝えるのよ。赤色は熱愛。白色は尊敬」
「あ、だから映画などで男はバラの花束を持って女性を訪ねるのか」
「アザミには復讐って意味があるし、紫陽花にはあなたは冷たい人って意味があったりするから注意してよ」
 花言葉があることは知っていたが意味にまで興味は無い。それでも俺は紫陽花の花言葉に反応した。紫陽花は「コッココーヒー」のシンボルマークとしてユニフォームやメニューにプリントしてある。一つ一つの小さな花が集合して一つの花になることと、冬の寒さに枯れたように見えながら、春になると芽吹いて枝を広げ、鬱陶しい梅雨の時期に眼を楽しませてくれる花として選んだのだが、冷たい人と言う意味は知らなかった。いや考えて見ると、客は冷たい人だ。店への魅力や利用価値が無いと判断するとすぐに見切りをつける。そう自覚する意味でも紫陽花をシンボルと選んだのは間違った選択では無い。そんなことを思いながら、なぜか顔を赤らめる裕子に鉢を手渡した。(続く)


わーい(嬉しい顔)クウネル日記目がハート
 今日は良い天気です。でも頭痛と眠気が・・小説なかなか書けないけど、とりあえず昼寝します(笑)
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