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2019年08月18日22:58

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7月20日(土)SYOMIN’S「砂の家族」@シアター711

7月20日(土)、SYOMIN’S「砂の家族」@シアター711、観てきました。元ハイレグジーザスの今奈良孝行さんと元ファントマの看板女優、美津乃あわさんが去年旗上げした劇団の第2回公演です。前回の旗上げ公演に引き続き元ハイレグのメンバーが何人も出ていたので、今回も楽しみにしてたんですよ。前回公演の内容も良かったしね。
チケット発売日の時点では仕事の予定が立たず行ける日が決められなかったので、2週間前くらいにカンフェティで当日精算チケットを予約。劇団の公式twitterアカウントから初日間際までチケットの出足が鈍い様子が窺えたので、余計なお世話と思いつつも心配になってしまいました。初日までの2週間、期間限定で上演台本をネットにUPして事前に読めるようにしたり、ハッシュタグをつけて感想ツイートすることを条件にして、公開ゲネプロにお客さんを招待したり、といった面白い試みをやっていたせいか、最終的にはほぼ全日程、客席がほぼ満員になる盛況ぶりだったとのことで安心しましたが。こういう芝居の客足がなかなか伸びないの、本当に勿体ないなー、と思うんですよ。
当日精算の受付のため劇場前に行くと、入り口には今回の客演でダブル主演の1人、扉座の山中崇史さん宛てに東映と相棒から花が届いていました(写真)。後で分かったんですが、この日は捜一コンビの相方、イタミンこと川原和久さんが観に来られていたそうです。

入場して下手側の2列目の席について開演を待っていると、場内が混んできたので、奥に詰めて下さいとのアナウンスが。かけ声に合わせて一斉に詰める、小劇場名物 所謂「よいしょ」の椅子席バージョンです。これ、久しぶりにやったなあ。客席入り口で今奈良さん自ら前説をやってたり、前回公演に引き続き出演している矢尻真温さんによる物販の宣伝があったり、といった昔ながらの小劇場らしいこともやっていて、そんな雰囲気が懐かしくも心地よかったです。

間口の狭い舞台上は、下手側前方と上手側奥がそれぞれ高さ50〜60cmほどの大きな箱を対角線上につなげて置いたような感じにかさ上げされていて、下手奥の低くなっているスペースの背景には手描きで描かれた浜辺の風景の書き割りがあります。それ以外には特に何もないシンプルな舞台セット。
物語は恐らく終戦から数年後の広島で、戦災孤児のブンゴ(山中崇史さん)、ハル(美津乃あわさん)、ナンバル(山田伊久磨さん)の3人が、死んだ仲間の骨を浜辺に埋葬しているシーンから始まります。3人のそばには大根1本を盗んだせいで半殺しの目に遭って瀕死の重傷を負った仲間が倒れている、という状況。
原爆で親を亡くした後、同じ境遇の者同士防空壕跡の洞窟で身を寄せ合って生きている彼らは、浮浪児と呼ばれて蔑まれていた当時の戦災孤児の境遇の例に違わず、周りから厄介者扱いされていて、重傷を負った仲間も間もなく死亡、その後3人は終戦後にヤクザまがいの手配師になっていた担任教師 アベ(今奈良孝行さん)に再会、だまされて炭鉱や遊郭に売り飛ばされて…といった具合に結構重い展開が続く上に、次から次へと彼らに災難が降りかかるんですが、3人が必死に(時には自分や仲間を守るために殺人までして)生きていこうとするたくましさが前面に出ていたため、さほど悲惨な感じはしませんでした。その後全員、そこから逃げ出して自分の力で生きていく展開になったしね。
適度な笑いや小ネタもありました。ハルが産気づいた時に呼ばれた産婆が前作「隻眼の産婆」で美津乃あわさんが演じていたスーパー産婆 アワが出てきたシーン、面白かったなあ。
この3人にハルが遊郭から逃げる時に仲間になったユズ(仲坪由起子さん)を加えた4人のその後20数年にわたる人生を、最小限のセットと衣装と役者さんの演技だけで見せていく演出は、これぞ演劇の醍醐味!って感じがしました。15、6歳くらいの少年少女から4、50代の中年までの演じ分け、素晴らしかったです。皆さん演技の説得力がすごいんですよ。特に山中崇史さん、舞台で芝居してるところを初めて見たんですが、すげー演技上手いのね。細かい表情の芝居や声のトーンの使い分けとか、映像の芝居見てるだけでは全然気がつきませんでしたよ。
男の借金の連帯保証人になったためにヤクザに追われる羽目になったユズが、1歳になるかならないかの娘 カボスをハルに託して逃げてから20年近く後に原爆症を発症、働けなくなって物乞いに身を落としたところに成人した娘が会いに来るシーンがあったんですが、ここの仲坪さんの演技、すごかったなあ。最初、目の前に現れた若い女が自分の娘だって気づいてなかったところからの変化がね。
私、このシーンを見るまで彼ら戦災孤児が被爆者だってことに気づいてなかったんですよ。序盤で爆弾で親が殺されたって台詞が出てきたのも、普通に空襲で死んだもんだと思ってて。台詞が広島弁だった理由がここでようやく分かりました。
新井友香さんがブンゴの勤め先のホテルの社長令嬢で、彼を気に入って半ば強引に結構する社長令嬢役をやってたんですが、いい感じに頭のネジが飛んでて(注 褒めてます)面白かったです。

「砂の家族」というタイトルの中にある「砂」という言葉は、家族を亡くした戦災孤児達が家族になろうとする物語の中で、彼らが見ていた家族像の原風景みたいなもんなのかなー、と思いました。物語冒頭で彼らが住んでいた海辺の街や、仲間の骨を埋めた浜辺の砂のイメージ。終演後のカーテンコールでは撮影OKタイムが。
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久しぶりにがっつり芝居見たなー、と思える演目でした。

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