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2019年08月24日22:33

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蟲愛好家の悲劇

その男は、60近い歳になってもまだ、蟲への執着を捨てられずにいた。
晩夏の陽射し注ぐ中、とあるアパアトメントの門扉にそれはいた。
蟲好きでなくとも気付くのではないだろうか?
黒い金属門扉に白いそれの対照は、あまりにも鮮明と言えた。
ましてや蟲好きならなおさら。
それがハエトリグモだということくらい、ほぼ一瞬で見抜く。
近付いてよく観察する。
どうせシラヒゲあたりの一般種だと、タカをくくっていたのだが違った。
これは見たことがない。
俄然興が乗る。
いつものごとく撮影〜帰宅後図鑑にて同定、の流れが脳裏に浮かぶ。
しかし今はスマフォを所持していない。
仕方なく業務連絡専用の携帯電話を取り出す。
さあ、カメラモオドに切り替えて。
ピント、ピント・・・、むう、なかなか合わん。
悲劇はそこで起こった。
ピキイイイイイイイイン。
くわあっ。
ピントを合わせようと固まる姿勢が長かった。
またも持病の腰痛発作到来。
ちっ、油断ならねえお腰さんだわ。
ふとしたときにこうなるから、防ぎようないじゃんか。
さほどひどくなさそうなのが幸いか。
結局撮影も行われず、男は立ち去った。
ほとんど白に近いグレイ色のハエトリの姿を、薄っすら記憶にしみ込ませて。
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