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2019年01月16日23:21

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不定期不連続物語「蟲五郎幻行録」その430

【鳴き声】
あの鳴き声は、いったいどこから聞こえてくるのか?
東北方面との見当はつくものの、まさか八戸ではあるまい。
まるで焼きごてを濡れた砂に押し付けたような、ジュワッジュワッという奇妙な声。
かつてこの辺りで頻発した、闇米商人狩りで打ち殺された者たちの亡霊が発するのだろうか?
その商人たちは、髪の毛を引きずり回された挙げ句に惨殺されたそうだ。
それはちょうど今頃、書き初めの時分に多く行なわれたと聞く。
床の間に飾られた張りぼての人形が、不気味に笑いながらこちらを見ている。
ツンと鼻を突く、髪染めのような薬品臭が漂う。
このかりそめの宿も、そろそろ発たねばなるまい。
蟲五郎も三郎太も、こんなところで足止めを食らう筋合いはないのだ。

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