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2020年01月24日16:12

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詩 『今日は死ななかったねと「あいつ」は言った』

 
 朝、目が覚めると遅れてやってくる憂鬱 おはよう、今日も元気かい? うるせえ 死んじまえ! 

 そう叫んで起き上がったのは一体どちらなんだ?

 奴は無二の親友 物心ついてからいつも一緒な腐れ縁 いい加減 縁を切りたいが、おそらくは死ぬまで付きまとってくれるだろう だから悲しいことに俺はいつだって一人じゃないんだ なのでいつも願ってるんだ一人にしてくれって

 ママはいつも悲鳴を上げてる パパに殴られて、あるいは切りつけられて もしくは銃を突きつけられて

 そして俺はそれを醒めた目で見続けているんだ パパがママを殺そうとする姿を

 まるで日替わりショーさ あらすじは千差万別 返事が悪いってのが一番多かったかな? レアなときは『なんとなく』だってさ

 二重音声のように奴は俺の耳元で囁く 『ほら、今日でお前もママも死んじゃうのさ』 『死ぬってなに?』『そのうちわかるよ、あるいは今すぐにね』

 時にはショーは参加方式になりかわる。 ほら、俺と奴を抱えたママがパパから逃げる鬼ごっこさ 鬼は永久にパパだけどね

 川原に腰まで浸かって冬はガチガチドラムのように歯が奏でる音を聞いて夏は世が開けるまで街中を彷徨い歩く

 朝焼けの美しさに生まれて初めての感動と共に奴は言った

『今日は死ななかったね』 子供の俺は薄笑いを浮かべながらこう返した『うん、そうだね』
   
 そんな日々がほとんど たまにパパの機嫌がよければ明るい家族 なのに ランダムで始まるパパのバイオレンスショー

 そんな毎日さ のべ 800日ショー フロム 四歳くらいまでの計算
 
 ある日 奴が言った死ぬってことを体験することになった ほんのさわりか入り口か片足か かろうじて今はまだ生きているけれど

 暗い部屋 ママは泣いている 二人だけの暗闇で聞こえるすすり泣き すでに聞き飽きた子守唄 寝る前にいつも聞かせてくれた 悲しみの詩
 
 急にママが俺の首に手をかけた ギリギリ締め付ける力に 息が苦しくなる 電気をつけていないのに目の前は赤くて 黒い 急な滑り台のように暗い底へと堕ちていく。 
  
 上がることない ジェットコースター 浮かぶこと無い地の底 モンスターに食われて堕ちる胃の袋 たどりつけば 包み込まれる死 溶解して垂れ流す命

 惨劇はそこまで かろうじて免れる終劇 正気に戻り 泣きつかれる母子 哀れなるとある寸劇 後に繰り返される悲劇

 そこから死ぬのが怖くなったのが半分 生きる意味もハーフ&ハーフ 人はいずれ死ぬ 僕は人よりも少しだけ高い 未来って何? 不確定な来年なんていらない
このさき? 知らない いらない 意味なんて無い 

 ほら、あいつも言ってる

 終わりだ 今日死ぬ それがないなら明日死ぬ 明後日かそれとも来年か? このさき全てが潰えるなら 今に価値など無い
 
 いや違う 生きてこそ楽しめる今 アニメもテレビもドラマもマンガも生きてさえいれば 死んでいなければ やがてたどり着くゴール 先などない文字通りの終 点 だからあと少しだけ もう少しだけ かろうじての生きる意志を信じて ふと思った幼稚園の時

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