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2021年10月13日04:35

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読書日記Nо.1388(10年ぶりに読む現代詩 吉野弘)

■小池昌代編「吉野弘詩集」2021年5月第4刷岩波文庫

詩歌を好きになったのは、中学、高校の国語の教科書に掲載された作品に
馴染んだからです。

学生の頃までは、現代詩も読んでいましたが、働くようになった以降は、
専ら日本の短歌や俳句に比重が移りました。

この読書日記でも、短歌や俳句は、結構取り上げてきましたが、現代詩は
ひさしぶりで、10年前の、東日本大震災直前の2011年3月1日に、茨城のり子
さんの作品について、書いて以来です↓。

https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1681910821&owner_id=5540901

なぜ、本書を今、手に取ったかというと、書店の店頭で目が合ったからと
いうしかありません。なんとなく、現代詩が読みたくなったからです。

本書の惹句を紹介します。

“穏やかな語り口 深い愛情に満ちた決定版詩集”

“結婚式の祝辞としてよく引かれる「祝婚歌」、いのちの営みに静謐な眼差しを
投げかける戦後詩の名篇「I was born」、現代における受難の意味を心のやさしさ
に見つめる「夕焼け」など、穏やかな語り口の深い愛情に満ちた全140篇。”

さっそく、「祝婚歌」を引用します。

祝婚歌

二人が睦まじくいるためには
愚かでいるほうがいい
立派すぎないほうがいい
立派すぎることは
長持ちしないことだと気付いているほうがいい
完璧をめざさないほうがいい
完璧なんて不自然なことだと
うそぶいているほうがいい
二人のうちどちらかが
ふざけているほうがいい
互いに非難することがあっても
非難できる資格が自分にあtったかどうか
あとで
疑わしくなるほうがいい
正しいことを言うときは
少しひかえめにするほうがいい
正しいことを言うときは
相手を傷つけやすいものだと
気付いているほうがいい
立派でありたいとか
正しくありたいとかいう
無理な緊張には
色目を使わず
ゆったり ゆたかに
光を浴びているほうがいい
健康で 風に吹かれながら
生きていることのなつかしさに
ふと 胸が熱くなる
そんな日があってもいい
そして
なぜ胸が熱くなるのか
黙っていても
二人にはわかるのであってほしい

・・・こうして引用してみると、つくづくいい詩だなと、改めて胸に染みてきます。

吉野弘さんは、大企業のサラリーマンだった時期もあり、組織で働くつらさ・虚しさ
を詠った、初期の詩もありました。

今、私自身、来月で、四十数年にわたった、職業生活を卒業しようとしているので
また、現代詩を読んでみようという、心の変化があるのかもしれないと感じた次第です。

でも、140篇の吉野弘を読んで、心が洗われたことだけは、確かです。

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